英語快読100万語 (5)やっぱりケンブリッジ

1週間ほどロンドンに出たので、私が滞在してる町にはあんまり置いてないケンブリッジ大学出版のシリーズを2冊ほど買いました。ケンブリッジのものは「大人向け」に書き下ろされた物、ということなので、それなりに面白いものが多いかも。私の同僚も、「いかにもイギリス~っていうストーリー展開や状況設定が多くて、イギリス好きの人にはこたえられない」と言っていましたが、確かにそうかも。

人それぞれでしょうが、どうも私はペンギンのものよりケンブリッジあるいはオックスフォードの物の方が好きだな。ペンギンは紙質がペラペラしてるってのもあるのかもしれないんだけど。ま、ペンギンのものは、ほとんど読んでなかったりするんだけど、本屋で手にとってぱらぱらページをめくった感じと、シェークスピアの伝記と拾い読みしたシェークスピアの戯曲の要約の2冊から受けた印象からして・・・。

オックスフォードのブックウォームのトゥルー・ストーリーも好き。英語もきれいだし、話の展開の仕方に工夫があって、読み物として優れています。

17.
9月14日(日):Second Time Around:193900語:?:50000:193900語:☆☆☆:
メアリ・ヒギンズ・クラークの新作。ガンのワクチン製造をめぐる陰謀・策謀。医学用語が出てきたりするのと、読者を話に引き込むペース設定がゆっくり目なのとで、最初から細切れで読んでたのとで、14のものより読みにくかったです。
「ひょっとして実力ついた?」という希望は、これで見事に打ち砕かれました。まぁ、話の筋を追うのには苦労はしないんですけれど、日本の同程度の推理小説を読むのに比べれば、格段に読むのが遅いですね。また正確に意味を把握していない単語も多いので、推測しながら読んではいるのですが、それがきちんと意識化され、記憶に定着されるところまで行かない。

18.
9月16日(水):A Puzzle for Logan (CER3):1300語:16000語:209900語:☆☆☆
ローガン警部シリーズは各レベルに散らばってるみたい。スコットランドはエジンバラを舞台にした推理物です。ローガン警部は優秀な女性警部。警察という男社会の中で、美人であることがジャマになることもあるけれど、自分よりずっと年上の男性部下の信頼も勝ち得ています。

19.
9月17日(木):Two Lives(CER3): 1300語: 15000語: 224900語:☆☆☆:
イギリスらしい、ビター&スィートなお話し。ウェールズの炭鉱の町が舞台です。炭鉱の町には、それ以外の雇用機会がありません。『リトル・ダンサー』や『ブラス』も炭鉱の町の話でしたが、そんな炭鉱の町には、しばしば悲しい物語があります。炭鉱の事故がその最たるもの。
でも、『リトル・ダンサー』や『ブラス』でもそうだったように、そういう町には、暖かい物語もあったりします。このお話も、そう。けっこう大人の読み物かな?

20.
9月18日(金):Henry VIII and his Six Wives (OBW2): 700語: 7300語: 232200語:☆☆☆
これも、16のスコットランド女王メアリの伝記同様、話の展開に工夫があり、ヘンリー8世の妻がヘンリーの遺品を整理していると、他の5人の妻からヘンリーに宛てた手紙を発見する、という設定。
なかなか凝った歴史私小説に出来上がっています。歴史というのは、生身の人間が織り成すものなのね~、と感じさせる一品。
読んでる途中で、”beheaded”というのがあったんですが、最初、「あれ?」と思ってしまいました。次に出てきた時に「あぁ、そうか」と分かったんですが。で、その後も何度も出てきて、この単語は私の意識の上に一度きちんとのぼってきて、定着した、という感じがします。
もちろん、この単語には過去にも何度も出会っているはずだし、一応意味も知っていたはず。でも、こうやって「ちゃんと出会う」ことが、とても大切だし、グレーディッド・リーディングは、そういう「ちゃんとした出会い」の機会を与えてくれるのだなぁと思いました。
17のような文献だと、その場では意味を(それなりに正しく)推測して読み進めているんですが、こういうプロセスを踏む前に、また次の意味が不確かな単語に出会ってしまう。
「何度も見たことはあるけど、意味はあいまい」っていう単語、いっぱいあるんですよね。そういう単語が1冊に2~3個しかなければ、ひとつずつそういう単語を「自分のもの」にしていけるんだと思います。

英語快読100万語 (4)手軽に教養が身につく

前回紹介したシェークスピアものは、書いた人の「頭が悪い」ためスッキリ教養が身につくというわけには行かなかったのですが、書いた人の「頭が良く」いろいろな知識をきちんと消化し、きっちり自分の中で整理して書いてくれていると、やはり前回紹介したクリスティものも、今回紹介するブロンテ姉妹もものように、非常に「お手軽」に教養が身につきます。

当初、文学作品をこういう「簡単バージョン」で読むことに抵抗があったのですが、考えてみれば、たとえ「お手軽」でも、「知らないより知ってる方がマシ」かも。たとえば子ども向けに書き直された『秘密の花園』や『レ・ミゼラブル』を子どもの頃読んだことが、私の精神的成長にとってマイナスになったとも思えないし、どうせ読むなら「原書」で、とか、「せめて原作に忠実な翻訳で」なんて「見栄」はってるより、いつの日か原書で読むことができるよになった日にも、「簡単バージョン」の知識が頭に入ってる方がいいかも・・と思い直しまして、これからは、文学作品の「簡単バージョン」にも手を出してみようかと思っています。

12.
8月22日(土):House by the Sea (CER3) 1300語:15000語:72100語: ☆☆☆ ロンドンに出る列車の中で読んだ。やっぱりケンブリッジのものは「大人向け」ということで一番面白く読めるかも。ちょっと物哀しいミステリー。使ってる単語数も総単語数も少ないけど、ちゃんとひねりも利いていてドキドキできる。
つまるところ「仕事しすぎ」の真面目な夫が捨てられる話なんだけど、この程度ので捨てられてたら、日本なんて「捨て夫」だらけになっちゃうんだろうなぁ。でも、すでに数年前から、大蔵省の役人は「仕事しすぎ」っていうんで結婚難だっていうし(昔だったらエリートっていうことで結婚市場で価値が高かったんだろうけど)、ま、日本も変わりつつあるのかな?

13.
8月30日(土):The Bronte Story (OBW3): 1000語:9600語:81700語:☆☆☆
ブロンテ姉妹の家は、留学前英語研修のコースのエクスカージョンで行ったことがある。また、去年の夏、NBTの「嵐が丘」のワークショップにも出て、ワールドプレミアも見たので、興味深く読めた。
『ジェーン・エア』『嵐が丘』は翻訳では読んだことがあるし、両方とも映画でも見たことがある。でも、ブロンテ姉妹のことや、ブロンテ家のことは、ちゃんとは知らなかったので、この本で全体像が掴め、『ジェーン・エア』や『嵐が丘』の背景にある彼女たちの(辛い)「体験」というものがあることがよく理解できた。
ハワーズのブロンテ姉妹の家ももう一度改めて訪ねてみたいと思った。

14.
8月30日(土):Daddy’s Little Girl: ?: 50000語: 131700語: ☆☆☆☆:
これは、Mary Higgins Clarkのペーパーバック。グレーディッドリーダーズのシリーズじゃないので、レベルや総単語数は不明ですが、私が参考にしている酒井先生の本によれば、ペーパーバックは10万語ぐらいということなので、その半分の5万にしときます。
ロンドンに行く電車の中で読み始めたので、最初の部分をまとまった時間がとれたということもあるし、話にいきなり引き込むストーリー展開になっているということもあって、ぐんぐん読めました。ただし、帰ってきてからは寝る前にちょこちょこ読むという生活になってしまったため、なかなか読み進まず(読み出すとコトンと寝てしまう。電気つけっぱなし。日本だとQが消してくれるんですが)、話は面白いのにもどかしい思いをしました。
すごく読みやすかったので、グレーディッドリーディングを始めて実力ついたのかなぁとも思ったのだけど、多分、ストーリーの内容との関連で単語が易しめだったのと、ストーリー運びの上手さと、最初の100ページぐらいを一気に読んだのが大きかったみたいです。同じ作者の新作を後で読んだ時はもう少し難しく感じました。

15:
9月9日(日):Sherlock Holmes and Duke’s Son(OB1): 400: 5900: 136600: ☆☆☆:
「名作」の簡単バージョンも手に取ってみようと思って読んだのがこれ。易しくしてあっても、ちゃんと読みごたえもあります。シャーロック・ホームズは中学生の時にはまって読みまくったのでなつかしかったです。

16:
9月11日(水):Mary, Queen of Scots (OB1): 400: 7300:143900:☆☆☆:
これは、スコットランド女王メアリの伝記です。「事実は小説より奇なり」を地で行くような波乱万丈の人生を送ったメアリの物語は演劇や映画などにもなっています。
これはメアリが息子ジェームズ(スコットランド王ジェームズ6世、イングランド王ジェームズ1世)にあてた手紙という形式を取ってるところがおしゃれ。また、彼女の心象風景がよく描かれており、楽しめました。たった400語しか使ってないのに上質な歴史小説に仕上がってます。

英語快読100万語 (3)グレーディッド・リーディングって楽しい

8月7日から、仕事の関係でイギリスに滞在しています。こちらで買えばGraded Readersも安いかなぁ、と思ったら、そうでもないです。日本で買うよりはいくらか安いかもしれないけど、でも、やっぱりこんな薄い本に日本円に換算して500円以上取られるのは、初学者からの「搾取」とも言えるなぁ・・・。

せっかくイギリスにいるのだから、外国人向けの「英語のお勉強」の本じゃなくて、こちらの子向けの本を図書館で読もうかなぁ、あるいは、ごく普通の大人向けペーパーバックを読む、というので行こうか、というのも考えました。

で、まぁ、このどちらもやってることはやってるんですが、たまたま買った、アガサ・クリスティについてのオクックスフォード大学出版Bookwormシリーズの一冊が面白かったので、Graded Readersの方も続けようと思いました。すぐに読み終わるので仕事の合間の「息抜き」に「ぴったり」だし。

出発直前の英会話のレッスンで、グレーディッド・リーディングの話をしたら、先生から、「何もそこまでレベルを下げて読む必要はないんじゃ?」と言われたりもしたんですが、自分の実力より易しいものを読む、しかも内容が面白いものを読むっていうのは、案外楽しいというのを、このクリスティについての本で感じました。

(実は前回5の文献の総単語数をこれまでの積算に足すのを忘れていました。それを足すと、ここまでの積算は33,200語です)

7.
8月10日:Agatha Christie, Woman of Mystery:(OBW2)700語:6400語: 39600語:☆☆☆☆: ケンブリッジのシリーズが本屋にあまり置いてなかったのでオクスフォード大学出版の物も手にしてみたら面白そうだったので購入。
クリスティは英語でも日本語でも何冊か読んでいるし、映画も何本か見たことあるし、去年の夏だったか今年の春だったか、大英博物館で「クリスティと考古学」というエキジビションも見たことがあったので、親しみを感じつつ、楽しく読めた。
クリスティの若い頃の話はあまり知らなかったので、その点でも新しい知識が得られて良かった。易しい英語で書かれていても、情報の知的レベルは決して低くなく、この手のものは、易しい英語で読む方が知識が定着するかもしれない、と思った。
8.
8月14日:Inspector Logan:(CER1)400語:3000語(新作らしく総単語数不明ですが、ケンブリッジのこのステップのものは3400~4800なので、とりあえず3000にしときます):42600語:☆☆☆: まぁまぁ楽しめた。ケンブリッジのものは、使っている語数が少なくても、あんまり無理を感じさせない。
これでケンブリッジのステップ1(400語)の5冊は読破!

9.
8月15日:Glitter Girls: Ballet Babe:イギリス人の子ども向け(6-8歳?): ? : 42600語: ☆☆☆ 仲良し5人組が一緒に色々なチャレンジをするというシリーズの中の1冊。私は少女向きのバレエ小説が好きなのでよく読む。これもバレエ物ということで手にした。
耳なれない、というより目慣れない単語が出てくると、つい目が止まってしまう。なかなか「まとめ読み」(1語ずつ読まずに固まりで読む)出来ないものだ。「pink Macを脱いで」…なんていうのがあると、「あれ? Mackintoshのこと? レインコートだっけ、長靴(長靴はWellington)だっけ?」などと日本語が頭の中に浮かんでしまう。
こちらの子ども向けの本は、易しいように見えて、目慣れない表現や大人は使わない表現が出てくるので、リズミカルに読むのがかえって難しい時もある。総単語数を数えるのは面倒なので、これは総単語数には入れないでおく。

10.
8月16日:Drive into Danger :(OBW0)250語: 1500語: 44100語: ☆☆ 単語数が少ないと表現や話の運びが不自然に感じられて、私の場合はあんまり楽しめない。単語数が少ないものは、むしろ子ども向けの絵本の方が楽しめるのかも・・・。
ただ、知らなかった”a skip”(超でっかいゴミ箱?)という単語が(辞書引くなという指示なので引いてないけど)、次の日の新聞でも使われていた。多分これまでにも出会ってたんだろうけど、記憶の中に定着してなかったんだと思う。案外良く使われる単語なのね~と思った。
こんな風にGraded Readersの中で使われていて意味を自分なりに推測した単語に、別のところでも出会って、その推測を確かめて行く・・・というプロセスは大切だと思った。
知らない単語がいっぱいある文章だと、その場でその語を推測することができても、結局はきちんと意識の中に定着しないんだと思う。1冊に1つか2つしか知らない語がなければ、こうやって、定着していくんだと思う。

11.
8月17日: Shakespear:His Life & Play (PG4) 1700語: 13000語: 57100語: ☆☆ 10の本で使える単語数が少ないと表現に無理があると思ったけれど、単語数が多いからといって、面白く読める訳でもない、というのもまた真実なり。英語自体は平明なんだけど、著者の「筆運び」が好きじゃない。「論理の運び」が好きじゃない。7の本なんかはたった800語で、とてもクリアにクリスティを描いていた。結局は書き手の質なのね。
シェークスピアについてそれなりに勉強した人が書いているのだとは思うけど、肝心のところで論証が甘かったり、逆説じゃないのに、しかも、文頭に”But”が多用されている。英会話学校で、”but”をあんまり文頭に使わないようにと指導されたこともあり(必ずしも使ってはいけないということはないらしいが)、大文字で始まる”But”に少し神経質になってるというのもある。
「ネイティブの英語に朱を入れてどうする」とも思うけど、「あのさぁ、それを言いたいなら、こんな風に書き直してみたらどう?」と突っ込みを入れたくなり、フラストレーションを感じながら、でも、知識自体は面白い部分もあり、最後まで読んでしまった。筆者は「知識」はそれなりにあるけど(でも、きっと自分の中でよくこなれてないんでしょう)、多分、あんまり頭は良くなさそう。(すみません口が悪くて)