英語快読100万語 (8)-「古典」「名作」を手軽に読む

これまで読んできた中で私の「好み」のものは、ケンブリッジ大学出版のの「書き下ろし」小説(私のイギリス好きの同僚が指摘するように「現代のイギリス」の香りがするのです)やノンフィクションもの・…。

しかし、夏にイギリスからの帰国便で読んだベネットのStories from Five Townsのような、「古典」とも言うべき「名作」を「手軽」に読む、というのももう少し追求してみようかな、と思い、ホーソンの『緋文字』(The Scarlet Letter)を読んでみました。

私、これ、翻訳を購入したことはあるのだけれど、「積ん読」のままでした。

こういう「簡単バージョン」がどれだけオリジナルの香りを残しつつ、自然なストーリー展開を確保できるのか、というのは「簡単バージョン」作家の「腕」にもよるんだと思うし、作品自体が「簡単にしやすいか否か」というのもあるんだと思います。

ベネットの簡単バージョンはもとが短編だったというのもあって「やりやすかった」のかもしれないし、翻訳ではあるけれどベネットのものを読んだことがあったので「香りが残ってる感じ」っていのが「分かりやすかった」のかもしれません。

『緋文字』に関してはなかなかハラハラドキドキするんですが、途中話が見えにくいところもあって(あるいは原作も? それとも私の英語力のせい?)、まぁ、いずれ翻訳を読んでみるかなぁ…と思ったりしています。でも、充分に楽しめました。

本当は仕事の上でもイギリス文学を幅広く読んでいる方が良いのだけれど、なかなかそこまで手が回らない(その割にど~でも良いようなミステリーは五万と読んでいる)ので、少なくとも仕事に関係のある「イギリス文学」系はこれでサクサクと読み進めるのも「手」だわね~と思ったりしています。

29.12月22日(火):The Scarlet Letter (OBW4):1400語: 17000語:語:371300語:☆☆☆☆:
16世紀のニュー・イングランドを舞台にした作品。主人公の女性は「不倫」(というより「姦通」っていう感じの当時にしてみれば非常に不道徳で大きな罪)による子を宿し、処刑台の上で数時間「さらしもの」にされた上、胸に一生”A”(adultury=姦通)の文字をつけて暮らさねばならない、という判決を受ける。彼女は「相手が誰か」ということについて決して口を割らない。そもそも、彼女の夫は彼女をニュー・イングランドに先に行かせたまま2年間も姿を現さず連絡も取らなかったという事情もあり、考えて見れば、「随分な」話な訳だ。女性の雇用機会なんかほとんどなかった当時、一体彼女はそれまでどうやって暮らしていたんだかな~。処刑当日に彼女の夫が「突然」現われる。で、その夫は彼女に「自分が夫であること」を秘密にするように言う。「何食わぬ顔」で暮らしている彼女の相手と、夫であることを隠して「新参者」のような顔して町の中に根をはっていく夫、そして彼女…。その3人の葛藤のお話であります。
彼女は子どもを抱えてその後お裁縫で身を立てて行くんですが、その契機となったのが、一生身につけていなければならない「緋文字」でした。彼女はこの「緋文字」を見事な刺繍をほどこして作るんです。で、彼女の腕は「誰の目にも明らか」になり注文は切れ目なくある。いや~、なかなか賢く堂々として潔い女性です。
オックスフォードのものは後に”Glossary”という「単語リスト」のようなものがついてます。本当は酒井先生の指示に従うなら「お勉強」しちゃいけないのだからそういうのも見ない方がいいのかな? 読んでいる最中に??で、でも、推測できた単語は”scafford”。本文読んでいる時には??と思ったのかもしれないけれど、「単
語リスト」を見るまで気づかなかった「知らなかった(覚えてなかった?)単語」が”meteor”。

30.12月26日(土):The Ironing Man (CER3):1300語: 15000語:語:381600語 :☆☆☆:
これは「コメディ」に分類されてます。これまで手を出してこなかったけれど「コメディ」にも挑戦してみるか…。しかし、読んで見ると「コメディ」と言うようりは、ちょっとビターなラブ・ストーリーかも。
ま、イギリス人男女も色々苦労してんのね~。まぁまぁ面白く読めたことは読めたんだけど、1時間以上もかけてロンドンに通うんだったら何だってそんな「ひっこんだ所」に引っ越したのさ!ってのが最初からよく分からなかったです。夫の勤務先がその町だか村にあって…っていうなら分かるけど…。
ケンブリッジのには「単語リスト」がついてないので気づいていないで見過ごしてる物もあるかもしれないけれど、一応分からない単語はなし。ケンブリッジのものには、お話の舞台になる所の地図が最初に出ていて、これはなかなかいい。オックスフォードのものにも地図があるといいのになぁ。

31.12月28日(月):The Tales from Longpuddle (OBW2):700語: 5000語(新しい本らしくリストにないのでこのレベルの本の平均語数より少なめにしときます):386600語:☆☆☆☆:
トマス・ハーディの「古典」。ハーディと言えば『テス』ですが、この本の後の方にある「著者紹介」のところを読むと、彼が生きていた時代には『テス』は評判悪かったんだそうです。話が暗いって言うんで…。で、このThe Tales from Longpuddleは、『テス』とは違って、軽くて明るい庶民の話です。
19世紀の文学を易しくした物なので、今はあんまり使わない(と思われる)”parson”なんていうのも最初??だったし、結局最後まで正確には分からなかった単語としては(形態などは挿絵もあって分かったのですが、材質とかそういうのは…)”tarpaurin”がありました。
「古典」物には1冊に1~2語分からない物があるなぁ…。現代物だと分からない語がない場合の方が多いけど…。

32.12月30日(水):Remember Miranda (OBW1):400語: 5700語394300語 :☆☆☆☆:
OBWのシリーズはこれまでは実話物か古典を中心に読んで来ましたが、これは”Human Interest”に分類されている小説。ちょっとミステリー仕立て。(若いのに)身よりのない主人公がノフォークの田舎の一家に住み込みのナニーとして就職します。母親を亡くした2人の子を世話するためなんだけど、なぜかみんな口をつぐんだように母親の話はしない…。近くに住む若い男性と友達になるんだけれど、その家族はその男性のことを忌み嫌っていて主人公にも彼との交際を禁じる…。でも、実はこの彼と、一家をよく訪ねてくる亡くなった母親の妹がこっそりつきあっていて…。

英語快読100万語 (7)-風邪の日のなぐさみ

カゼをひいて体調が悪く、午前中は医者に行ったのですが、2時間ぐらい待たされ、帰宅してからはふとんの中でうだうだと寝たり起きたりして1日を過ごしました。医者の順番待ちの間と、ふとんの中でぬくぬくと、グレーディッド・リーディングを楽しみました。カゼで頭がはっきりしないような時に、グレーディッド・リーディング(のあんまりレベルの高くないやつ)って丁度いいかも…。楽に読めて、しかも、1冊が薄い…。

結局1日で4冊読んでしまいました。

25. 12月20日(日):Just Good Friends (CER3):1300語:16000語: 253900語: ☆☆☆☆:英語教師の主人公がボーイフレンドと「ただの友達」のはずの元教え子のイタリア人の別荘を借りて休暇を過ごすところから、ごちゃごちゃとしてくる。このイタリア人は「イギリス贔屓」で、妻はイギリス人。「主人公のイギリス♀+そのボーイフレンドのイギリス♂」「主人公の元教え子のイタリア♂+その妻のイギリス♀」。そして友達のはずの「主人公のイギリス♀+元教え子のイタリア♂」ってのが、まあ色々と心理的に揺れ動くのです。その微妙な「揺れ」がなかなかに楽しめま す。面白かったのは、主人公のイギリス人カップルにおいては料理を担当してるのはいつも♂。そして、一昔前なら「複数の異性に惹かれるのは男の特性」だったのに、この本では「女の特性」だったりしてること。世の中変わったのね~。

26. 12月20日(日):Double Cross (CER3):1300語:16000語: 269900語:☆☆☆☆:スウェーデンの女性諜報部員が主人公のハラハラ・ドキドキのスリラー。舞台設定もスカンジナ半島から南アフリカまですごい速度で展開する。いやぁ、諜報部員って大変なお仕事ですねぇ。イギリスのMI5の元長官が女性だった(007はその点では
「実話」だったのか?)という新聞記事が出た時も驚いたが、女性もこういう世界でも活躍するようになったのねぇ。エキサイティングかもしれないけど、着実に寿命が縮みそうな仕事だなぁ…と思いました。

27. 12月20日(日):A Matter of Chance(CER4):1900語:17000語: 286900語:☆☆☆☆:たまたま古~い建物の屋根から瓦が落ちて、たまたまそこを歩いていて、たまたまそれが額に当たって妻が死んでしまった…。まぁ、世の中「たまたま」で成り立っているのだけれど…。その妻が忘れられず、2人で移り住んだイタリアに住み
つづける主人公が新しい恋に出会うのだけれど、これがまた波乱万丈…。これもアップテンポで楽しめます。

28.12月20日(日):The Love of a King(OBW2):700語:7400語: 294300語:☆☆☆☆:
「王冠をかけた恋」で知られるエドワード8世とシンプソン夫人の物語。いや~、たったの700語でよくこれだけ「読ませる」ものだなぁ…。しかし、シンプソン夫人、最初の夫であるスペンサー卿からDV(ドメスティック・バイオレンス)にあってたとは知らなんだ。DVは貧富の差、出身階層の差、人種の差を問わず、広く存在する…というのは本当なのね。こういう上流社会の「恥部」のようなもの、日本でこの手の話を書いたら、きっと割愛するよね。こういうとこもキッチリ書くのがイギリス的で良いなぁ…と思いました。

4冊読んでみましたが、なんだか「英語の難易度」ってのは、ちっとも感じないなぁ。使用単語数が少ないから読みにくいとか簡単とか、あんまり感じない。

まぁ、私の場合だと、今回読んだもののうち一番難しいレベルでも知らない単語はほぼない訳ですが、それにしても、「自然な英語で書かれた物」というのは、「す~っ」と読めるもんなんですね。

文章の良さは語彙の多寡ではなく「自然さ」なのかな? もちろん語彙が多ければより複雑なことを表現できるとしても、それを「簡単な表現」で置き換えても、ちゃんと「話しは分かる」ってことよね。

語彙を増やすのは大切ではあるけれど、語彙が「自然な流れ」で使えるってのが、もっと大事なんだなぁ…としみじみ思ったのでありました。

英語快読100万語 (6)-ペース・ダウン

イギリスから帰国して、英語の方はすっかりペース・ダウンしてます。帰国したその週の週末も次の週の週末も出張…。秋は仕事の繁忙期なんです。土日両方とも休める週というのはほとんどない…。

これまで「面白さ」の☆をつけてきましたが、これ、ちょっと「厳しくつけすぎたかなぁ」という気がしてます。ほとんどが☆☆☆になってしまってる。正直言えば、「☆×3.5」ぐらいかなぁ…というのもいっぱいあった。

という訳で、ここから先、これまでの☆と「一貫性」を欠くのですが、「すっごく面白い」を☆×5、「なかなか面白かったぞ」というのは☆×4、「まあまあ」を☆× 3、「ちょっとな~」を☆×2、「つまんな~い」を☆×1、「こんなの読ませんな~」は☆×ゼロにいたします。

21
9月22日(月):Stories from Five Towns (OBW2): 700語: 5700語: 237900語: ☆☆☆☆:アーノルド・ベネットの作品。帰りの飛行機の中で読みました。アーノルド・ベネットは大学院生時代に『二人の女の物語』というのを読んでなかなか面白かった記憶があります。1900年頃のミッドランド地方の5つの町を舞台にした短編集です。ちょっとおしゃれで気がきいていて、「文学を読んだぞ」という気持ちにさせられる。私は時間潰し(仕事からの逃避)に、「どーでもいーよーな」本を良く読むのですが、こういう「良質な」ものを読めば、もちっと「高級な」人になれるかなぁと思ったりもしました。読後感がさわやか。

22
11月9日(日):The University Murders: An Inspector Logan Story (CER4): 1900語: 15000語(?新刊本らしくリストに載ってません。ローガン警部のシリーズはケンブリッジでも人気シリーズなのかな? 次々新しいのが出てるみたい。とりあえずケンブリッジのレベル4の中で一番少ない16000語よりちょい少なめに計算しときます): 242900語:☆☆☆☆:しばらくグレーディッド・リーディングから遠ざかってました。ふと本屋に立ち寄った時、ローガン警部物が売ってたので買ってみました。大学が舞台のミステリー。ローガン警部物はどれも一定の質があるので安心して読めます。ペーパーバッグ1冊読む…というと私の場合時間がかかりすぎて「イージーな気晴らし」にはならなかったりするけれど、これくらいならお手軽。「気晴らし」と「英語の勉強」を兼ねて、グレーディッド・リーディングを進める方が、「手軽な読書」に「逃避」して「仕事から逃げる」より良いかも…。これは、カゼをひいて体調が悪かった時に読みました。

23
11月24日(月):The Death of Karen Silkwood (OBW2): 700語: 5800語: 248700語:☆☆☆☆:これは「トゥルー・ストーリーズ」のシリーズ。フィクションっていうのは「人が作ったもの」だからある意味「すべて分かってる」話だが、実話ってのは「分からないことだらけ」という解説がついていた。たしかにそうかも…。原子力関係の工場で働くカレンの「謎の死」をめぐる話です。カレンは工場の安全管理のあり方に疑問をもち、組合活動に打ち込むようになります。だんだん工場の「秘密」に近づくと身辺に色々なことが起るようになる…。「たしかにありうることかも…」という、実話だけに「こわ~い」話。舞台はアメリカなんだけど、イギリスの話だともっと良かったな~。でも、オックスフォード出版の人達にとっては、この手の話は「外国」の話の方が取り上げやすかったりするのかもね。一つだけ「分かんない」単語があったの。後のグローサリーにも出てない。「辞書引いちゃいけない」っていう
から、引いてないけど、気になるなぁ…。

24.
11月26日(水):The Coldest Place on Earth(OBW1): 400語: 6300語: 255000語:☆☆☆:スコットとアムンゼンの南極点到達のストーリー。以前スコットの方の話を芝居(日本で上演されたのだが、英国の劇団が英語でやった)を見たことがあり、そこで描かれていた「心理劇」に比べると迫力や掘り下げに欠けた。でも、たった400語でこれだけの話を書けるってのは、すごい!とも思う。「イギリス人ライターらしい」と思ったのは、こういう「簡単な」読み物でも「美談」に終わらせないこと。スコットやアムンゼンは決して「英雄」としては書かれていない。頑固だったり、人の気持ちを無視したり、けっこう「やなやつ」としても書かれている。そういうのを、隊員の日誌や隊員が家族に宛てた手紙なんかを上手に引用しながら話を進めていく。私が印象に残ったのは、この人たちが、途中、ポニーや犬をつぶしながら食べ、「体力を回復」しながら探検を続けたということ。馬刺しを食べる日本人や犬を食べる韓国人を「馬や犬友達であるイギリス人には考えられない」とか言ってるくせに、「なんじゃい、あんたらも食ってるぢゃん」と思ったりいたしました。