バレエな休日 (8)-NBT「嵐が丘」(2002年9月)

とても充実したワークショップを終えて、次は実際の舞台を見るために劇場へ向かいます。今回はリーズのグランド・シアター(シーズン初めは大抵はここ)じゃなくて、ブラッドフォードのアルハンブラ・シアター。折悪しく鉄道のストライキがあり、その影響で列車の本数が少なくなってるのでタクシーでブラッドフォードへ。

やはりワークショップで説明を受けているので、作品への理解の度合いが違うし、自分自身を深くコミットさせながら見ることが出来ます。自分が習ってやってみたステップを実際プロの人舞台で踊ってるのを見るのはなんだか感動しちゃいます。

作品はとても良かったです。音楽も良かったし、ストーリーも上手に効果的にまとめてありました。コミカルな部分も混ぜてあって。観客にもすごく受けていました。新聞の前評判も高かったけど、たしかに良かったです。キャサリン役のシャーロット・タルボットすごく良かった。熱演でした。ヒースクリフ役のジョナサン・オリバーも良かったです。でも、彼ももう少し良くなりそう。まだ演技に少しスキがあるかな。

ヒロナオ・タカハシさんのエドガー(キャサリンと結婚する金持ち)もとっても良かったです。これまでの彼の踊りってテクニックはシャープだけど感情の表出がブロックされてる感じがあったんだけど、なんだかそれがとっぱらわれた感じがあります。チアキ・ナガオさんは、今回のキャストでは踊る場面が少なかったけど、プリンシパルもこうやってワキも踊るのが、またこのバレエ団の良いところなんですよね。あいかわらず愛らしい踊りでした。彼女がキャサリンを踊るキャストで是非もう一度見てみたい。

その後出待ちしました。ワークショップで教えていただた先生も通りかかって、「Q母さん、舞台楽しんだ?」って声をかけて下さいました。ワールド・プレミアということでレセプションがあったみたいで、ずっと待ってたんだけど直接会場に行ってしまったダンサーも多かったみたいで、チアキさんには会えませんでした。でも、大好きなダニエルと初めてお話しすることができました。うふふふふ・…。

彼がキャストに入ってるかどうか不明だったけど、一応2人に心ばかりのプレゼントを持ってきてあったので(彼には一度チアキさんを通じてファンレターというか私自身が見たすべての彼の踊りの評を渡してもらったことがあります。そしたら、サインと生写真をくれました)、それをお渡ししたら、”You are so sweet!”ってハグしてキスしてくれました(ほっぺにだけど…。当たり前か…)。わ~い!! という訳でとても幸せな土曜日でした。(いずれサポートしてもらっちゃうぞ!と大胆不敵な事を考える私であった)

この後リーズに戻ってリーズで1泊。翌朝Mに戻り(リーズからは急行で1時間ほど)、宿に寄って荷物だけピックアップして(清算はリーズに行く前にすませてあった)、急ぎ空港へ…という予定だったんですが、なにぶんど鉄道ストが重なって(イギリスではよくあること。イギリスの旅はこういう要素も考慮にいれて発てないとダメです)、「飛行機が発つ前に空港に着くのか~?! 本当に日本に帰れるのか~?!」状態でしたが、何とか無事に帰国でき、良かった良かった。飛行機に乗り遅れるリスクをおかしてまで、リーズに行って本当に良かったです。

バレエな休日 (7)-NBT「嵐が丘」のワークショップ(2002年9月)

NBT(ノーザン・バレエ・シアター)の新監督デイヴィッド・ニクソンのイギリスに来て初めてのオリジナル作品、「嵐が丘」が上演されることになりました。NBTの本拠地はブロンテ姉妹の故郷ハワーズともほど近く、「嵐が丘」の舞台になったヨークシャー・ムーアとも程近いリーズ。まさにピッタリの作品です。

NBTでは公演の前に上演地でワークショップを開きます。作品の説明を受け、実際に舞台で踊られる踊りの一部を習うことが出来るのです。2001年9月に「欲望という名の電車」のワークショップに出たことがありますが、この時は、ワークショップに出ただけで実際の作品を鑑賞することは出来ませんでした。しかし、今回は、ギリギリ
の日程ではあるが、なんとか作品の世界初演も見ることが出来る…。ワークショップとワールドプレミアの翌日の午後飛行機が出るというので(リーズに1泊して朝1でMまで行き宿から荷物を取って空港へ)、かなりドキドキの日程でしたが、どうしてもこの素晴らしい体験をのがしたくなくて、決行することにしました。

おりしもBBCで、「嵐が丘」を現代風にアレンジしたドラマが上演され、その意味でもNBTはラッキーだったと思います。BBC版では、ヒースクリフとキャシーの設定を入れ替え、男性主人公(名前忘れた)は中産階級の気の弱い男、キャシーは貧しい家の出身で気性の荒い女性、という設定でした。男の家族は息子がキャシーと付き合うのに反対…っていう設定です。

せっかくの機会なので「嵐が丘」を英語で読もうと思ってペーパーバックも買いましたが挫折…。でも、美しい英語です。

今回のワークショップは参加者が少なく私も含めて4人。私以外は10代前半かせいぜい半ばのお嬢さんたち。みんなバレリーナ体型で、レオタード1枚。前回赤のレオタードで思いきりはずしたので、今回は地味目のレオタード。私だけ思いきり場違いだけど、いいの…。

まず、先生は、「嵐が丘」のおおざっぱなストーリーと主要登場人物のキャラクターの説明。そして、今回の「嵐が丘」が新監督のディクソンにとっての本当の意味でのイギリスでのデビューになること、の説明がありました。すなわち前2作はアメリカから持ってきた作品だし、「マダムバタフライ」は日本、「アイ・ゴット・ア・リズム」はアメリカと舞台設定がイギリスの外だった。でも、今度は全くの「新作」だし、舞台はイギリスで、しかもNBTのまさに本拠地のすぐ近く…。NBTにとって、これ以上相応しい新作はない…。

そんな訳でバレエ団としてもかなり力を入れている様子は、スタッフの興奮ぶりからもよく分かりました。私達4人をスタジオに引率してくれた人も、ワークショップを担当してくれた人も、すごくエキサイトしていました。私達をスタジオに引率してくれた人は「きのうドレスリハーサルを見たんだけどすごくすごく良かった。私大泣きしちゃった」って言ってました。この、みんなが一丸となって頑張ってる感じも私がNBTを好きな点です。

説明が終わってからバーをやりました。時間は短かったけれど、色々と細かく注意してくれました。先生は、バーの時から「踊りの質(クオリティ)」を大事にしてやるということの大切さを、強調されてました。たとえば、アラベスクのポーズで終わる。その時、手と脚は終わった時点からさらに伸びていく。その「伸び」の部分がクォリティ。それをいつも大切にする…・。

私はロンデジャンで前から横に回す時にアンデオールを逃してるという点を注意されました。

また、バーの中でも一部、最後のポーズを自分で「クリエイト」するというのがあり、先生は、「これが今日の最初のみんなのクリエイティブ・ワークよ」っておっしゃいました。

さて、次にセンターなのだけど、その前に「嵐が丘」で使われる音楽の抜粋をピアニストさんが聞かせてくれました。今回は音楽もオリジナル。作曲は、「ミス・サイゴン」や「レ・ミゼラブル」を作曲した人だということ。かなり力の入った作品です。いやが上にも私達の気持ちも盛り上がっていきます。

そしていよいよ振り写し。最初の踊りは、主人公のキャサリンがお金持ちのエドガーと結婚することになって、その時そこの家にお泊まりしてるんだけど、朝ベッドの上で目覚めて「あぁ、これもあれも、み~んな私のものになるのね」という場面。キャサリンの性格説明があり状況についての説明があり、だからこういう気持ちで踊る・・という説明がありました。一部分振り写しがあって何度か練習した後、じゃ、ここ から後は自分で「創作」して、と言われた。3分間あげるから振りを考えなさいって。キャサリンの性格と状況をよく考えて振りつけるように…とのこと。なかなか面白い体験でした。

次に冒頭でヒースクリフが、キャサリンが死んだ後、嘆き悲しみ、キャサリンの亡霊を見る場面。ハっとして振りかえる。するといない。でもまた別のところに亡霊を見た気がする…駆け寄るといない・…。そしてキャサリンを失った悲しみにもんもんとする。

ヒースクリフは最初キャサリンの父親がビジネスで旅行した時に拾ってきた捨て子。最初は動物みたいに粗野なところがあった。その「動物的」な感じをよく出して踊るように言われました。そして内に苦悩を閉じこめると思うと、それを「あぁぁぁぁぁ」と外に出すところの「メリハリ」をつけて踊るようにと。実際に舞台で使われるステップを習って少し練習した後、また「創作」がありました。

続いて、ガーデンパーティの場面。まずはお客さんたちが楽しく遊んでる場面。そして、しだいにパーティが熱狂してきて、そこに来てる人たちはお嬢様やお坊ちゃまなんだけど、だんだんバカをやりだす…ということで、バドミントンのラケットを持ってのちょっと「ハメをはずした」感じの踊り。

そして、さらには「パートナーシップ」の練習ということで、2人1組になって「即興」で踊らされました。2人で即興…というので、なかなかむずかしかったです。互いの回りをまわったり、位置を変えたり。呼吸を合わせないとなりません。

で、私はここで誉められました。いつも相手を見て踊ってるって。そして私の相棒に、「彼女はいつもあなたを見てるけど、あなたは時々見てないの。常に相手を見て踊ってね」と注意しました。で、2回目にやった時は、お互いずっと目線をキープしながら、とっても楽しく踊れて、「この組は大変良かったです」と誉められました。

今回は、時間を与えられて自分で振りを創って踊るというのや、時間は与えられず即興で踊る…という体験をしましたが、先生は、大切なことは、自分が踊る状況の中で、その人物の気持ちになる、そして音楽を聴…ということ。振りつけ(特にこういう即興的なもの?)は、考えすぎるよりは、状況に自分を置くということ…。そこに音楽が鳴れば「自然」に身体が動く…ということ。状況があって、音楽があれば、それは「振り」になる…。

日本のレッスンではこういう「創作」の部分はなかなか経験できませんが、バレエを踊っていく上で、とても大切な訓練なのかもしれません。

バレエな休日 (6)-ロイヤルの「眠り」(2003年3月) 

この時のイギリス出張と同時期に大学院の先輩で同業者でもあるEさんも渡英するとのことで、「ロンドンでメシでも食おう」ということになりました。ついでに、コンサートか何か、良いものがあれば一緒に…ということで、おそるおそる「バレエはどうでしょう?」と聞くと、未体験だけど行ってみても良い…とのこと。

滞在したMからロイヤルに何度も電話したんですが、いつも話し中でつながらない…。これはもうダメかなぁと思ったんですが、ロンドンに出た際にボックスオフィスに行くと残り少ないけどまだチケットはある…とのこと。やった!ということで、一番良い席を買ってしまいました。まぁ、お高いことはお高いけど、日本でロイヤルを見れば、この値段じゃ一番良い席は無理だよね~…ということで、ゲットいたしました。

出し物は「眠り」。マカロワ版です。新聞でも前評判が高く、チケット入手は半分諦めていたので、うれしかったです。イギリスに行くと私が良く買うダンス雑誌にマカロワのインタビュー記事が載っていました。

その記事によれば、マカロワ曰く、「眠り」をやるって言ったら、みんなから「勇気あるねぇ」と言われた。「眠り」はとてもアカデミック(正確なテクニックが必要)な踊りであり、しかも、テクニック「のみ」にしてしまってはいけなくて、「表現」がとても難しい。特にオーロラの「表現」は難しく、彼女自身現役の時は苦労した。彼女自身はフロリナ姫のようにストレートに感情を表現して良いものの方が得意だった。オーロラの場合は、「押さえた」表現が必要で、しかも、1幕と3幕では、「微妙に」表現を変える必要があり、その「微妙さ」も難しい。「眠り」においては、表
現はすべて「形式」の中に納めなくてはならないのだ。100年の眠りから覚め、プロポーズもされ、「自信」を得たオーロラと、無垢で無邪気な、でも気品あるオーロラの違い…。それを、あまりにも「くっきりと」違えることなく、しかし、きちんと踊り分けること…。

マカロワによれば、やはりフォンテンのオーロラは最高に素晴らしかったとのこと。フォンテンはテクニックが弱かったと言われるがそんなことはない。テクニックを感じさせないほどテクニックがあったのだ。そして、何と言っても正確なテクニックの上に彼女が「表現」したもの…それは、まだ誰も超えたことのない境地である。

彼女自身は、オーロラの表現にうんと悩んだそうなんですが、たまたまクラスにとても気品があり純粋向くなレッスンメイトがいたとか…。で、彼女の一挙一動を観察してそれを「盗んだ」とのことでした。

…というようなインタビューを読んでいたので当日がとても楽しみでした。ロイヤルは舞台装置や衣装が豪華ですね。マカロワ板「眠り」はとても良かったです。よく研究されていました。妖精の踊りは、回り物はほとんどシングル。それを、音楽にぴったり合わせてゆっくりとぐる~っと回ってピタリと止める。完璧なコントロールが出来てなければ難しいですよね。リラはダブルでしたが…。う~む、こういうところできっちり「差」つけるのもちょっとすごいかも…。だいたい、プロの舞台で回り物シングルに押さえるっていのも逆にすごいかも…。

オーロラはコジョカルで、とても可憐。ローズアダージオでは、脚がちょっとワナワナしていて(でも、絶対くずれない)、ちょっとハラハラしたけど、でも、これは本当に難しい踊りなんですね。

私的には、ブルーバードを踊った、イワンというロシア人がすごく良かったです。フロリナ姫もとても上手だったけど、もうちょっとおさえた踊り方の方が好きかも。冬にフロリナ(を簡単にしてもらったもの)を踊ったばかりだったので、フロリナ姫のVaを見るのは格別楽しみでしたが…。

初めてイギリスに来た時にもロイヤルの「眠り」を見てるんですが、その時はちょっと退屈だったので、バレエは初めてという先輩に見せるのちょっぴり心配してたんだけど、マカロワの「眠り」は締まった演出で、先輩も楽しんでくれました。

彼はクラッシックの音楽は良く聞く人ですが、子どもの頃から「チャイコフスキーの音楽には何故色があるんだろう」っていつも不思議に思ってたんだそうなんです。で、バレエを見て初めて「チャイコフスキーの音楽の色彩が鮮やかな理由が分かった」とのこと。しきりに納得してました。

そっか、チャイコフスキーの音楽には「色がある」のね。

バレエな休日 (5)-NBTの「美女と野獣」(2003年3月) 

NBT(ノーザン・バレエ・シアター)は私が大好きなバレエ団。日本のバレエ雑誌でも時々紹介されますが、日本人のプリンシパルが2人います。1人は熊川哲也さんの従兄で、熊川さんがバレエを始めたキッカケになったという高橋宏尚さん、もう1人は長尾千晶さん。私はこのチアキさんの大ファンです。

私とNBTとの出会いについては、また改めて書かせていただくとして、私はイギリスに行く度に、このバレエ団の公演がある時は日程が許す限り、たとえ泊まりがけになっても(NBTはイギリス全国をツアーで回ってますので)、舞台を見に行きます。

今回は、ノッティンガムまで1泊でNBTの「美女と野獣」を見に行きました。ロンドンで「嵐が丘」を見るという手もあったのですが、ちょっと日程的にきつかったので。

NBTには私が大好きなダンサーがもう1人います。それはダニエル・ドゥ・アンドラーデ。前回、前々回の舞台では、ダニエルのキャストの日じゃない日のチケットを買ってしまい、「残念!」ということになってしまったので、今回は、キャストを確かめ、チアキさんとダニエルが出る日を確かめました。

チアキさんが「ビューティ」、ダニエルが「プリンス」の日があったので、迷わず、1泊でノッティンガムまで出かけることにしました。

ダニエルはちょっと盛りを過ぎてるのかなぁ。サークル(2階席の前の方。これもても良い席)しかなくて、少し遠めだったせいもあるかもしれないけど…。私はチアキさんやダニエルをはっきりと見たいので、たいていストール(1階席)の前の方を買うんですが、今回は売り切れで…。

ダニエルについては、改めて書きたいんですが、彼は見るたびにすごく違う踊り手に写ります。すなわち演技力がむちゃくちゃあるってことなんだと思うんですが。彼のパフォーマンスはあと何回見られるのかな? 可能な限り多く彼のパフォーマンスを見たいです。

彼が引退後、どういう道に進むのか不明ですが、万が一バレエ教師の道を選んだら、絶対彼の教室でレッスンを受けさせてもらうつもり! 可能だったら個人レッスンを取っちゃうわ!

チアキさんから聞いた話ですが、ダニエルはとてもサポートが上手とのこと。チアキさんが安心して踊ってる感じで、男性ダンサーの能力っていうのは、単純じゃないよなぁと思いました。ジャンプなどの力が一見衰えたとしても、男性ダンサーの力はヴァリエーションだけに現われるんじゃなくて、女性をいかに美しく見せるかっていうところにもある訳です。「自分が目立つ」だけじゃなくて、「相手のことを考えて踊る」ということ。

ここのところチアキさんは新人の若い男性ダンサーと踊ることが多かったから、今回はベテランのダニエルとで、少し楽が出来たんじゃないかな。首に手をかけるだけっていうような、難しいプロムナードもあったんですが、軽々とこなしているように見えました。

「美女と野獣」というタイトルからしても、宣伝用のパンフレットからしても、「おこちゃま向け?」と思ってたけど、大人でも充分に楽しめました。デイヴィッド・ニクソンがディレクターに就任してから、NBTはテクニック的にも強くなったと思います。

ユーモラスな振り付けも満載で、また、悪い(ミゼラブル)妖精と良い妖精の闘いの場面も迫力満点でした。

野獣の踊りが非常に良かっです。野獣の内面の葛藤がよく出ていました。野獣のコスチュームやメイクもすてきでした。

NBTは演劇性の強いカンパニーだから、これだけ芝居しながら要所要所で回転やジャンプをビシっと決めるのって、すごく難しいんだろうなぁと改めて思いました。こういう中でプリマを続けていくって、並みの大変さじゃないだろうなぁ。チアキさんを改めて尊敬。

舞台がはねてから、チアキさんとダニエルへのプレゼントを持って出待ちしました。この「出待ち」というのも、「旅のお話を少し」でみなさんが「出待ち」した体験を読んで、思い切ってやってみたことです。

私のピラーティスの師匠とチアキさんが知り合いで(バレエの世界って狭いですよねぇ)、いつもプレゼントだけ置いて、カードに名前だけ書いて住所は書かずにいた私に、チアキさんが師匠に、「次に見に来た時には是非楽屋に会いに来て」って、伝言して下さったのにも励まされて、2年前くらいだったかな? 初めてチアキさんを「出待ち」したんです。そして、何と(!)、次の日、お茶していただいたんです。

あぁ、こんな幸せでいいのかなぁ。好きなダンサーがいるっていうだけでも幸せなのに、こんな風にお話し出来ちゃうなんて…。(ちなみにダニエルとも言葉を交わしたことがあります。それについては改めて)

ノッティンガムでは初日だったので、主役の2人はその後すぐにスポンサーとのパーティがあり、劇場の人がチアキさんをパーティ会場から呼び出してくれました(>チアキさん ごめんなさい。でも、お会いできてうれしかったです)。今回はダニエルには会えなかったけど、チアキさんにプレゼントをことづけました。

ダニエルへのカードには「MからノッティンガムまでNBTの舞台を見にくるなんて、クレイジーって他人は思うかもしれないけど、来た価値がありました」と書いて…。

チアキさんからは、「明日カンパニーのレッスンを見にこない? デイヴィッドに話しておくから」と言っていただいたんですが、仕事の方もだんだん切羽詰ってきているので、残念ですがMに帰りました。次回行く時は、ちゃんとあらかじめ連絡してから行こう!(と毎回思うのだけど、とにかく出国前も超ギリギリで、そこまで余裕もって準備できないのですよね~)

ネットで得た知識やネットで得た友人によって、私のバレエの世界は、こんな風にも広がりを見せているのです。

バレエな休日 (4)-リーズYDCでのレッスン(2003年2月)

2~3月にかけてイギリス出張でした。滞在先はイングランド北部の都市M。

このMは、数年前、私が子連れ単身留学していた時に住んでいた街。その頃は、この街にあるかなり大きなバレエスクール(フルタイムの学生を受け入れているプロ養成機関)が、アダルトクラスっていうのを開いていました。週1回、バレエは「ビギナー」と「インターミディエット」、その他にジャズとコンテンポラリーがありました。おしむらくは、それらが全部同じ日の同じ時間帯にあるんですよね~。

それはともかく、その後もこの街を訪ねるたびに、ここでレッスンをしていました。でも、昨年9月にアダルトクラスが閉鎖になってしまったんです。「負担が大きすぎるから」って。すごくショックでした。「アマチュアはプロの邪魔にならない範囲でのみバレエを楽しむ権利がある」っていうのが私の持論なんだけど、実際、自分が拒絶されてみると、とても悲しかった…。

オープンクラスなんですが、私がいつも出ていた「インターミディエット」には常時20名以上の生徒が集っていました。イギリスではロンドン以外の場所では大人のバレエって、本当に機会が限られてるんです。でも、みんなその限られた機会をうんと楽しんでいる…。「週1回こうやって踊るとスッキリするわねぇ」って、みんな週1回のクラスをうんとうんと楽しみにしてたんです。クラスのみんなはその後どうしてるんだろう…。どこかレッスンできるところを見つけたかな…。

…という訳でMではレッスンが不自由。そこで、Mから急行で1時間ほどの街リーズに遠距離通学してレッスンしてくることにしました。ここには、ヨークシャー・ダンス・センター(YDC)っていうのがあり、色々な大人向けのクラスがあります。ただし、バレエは週1回2クラスのみです。6時からが「ビギナー」、7時半から「インプルーバー」。これに比べると、日本の大人のバレエって本当に恵まれていると思います。

せっかく遠距離通学するのだから…ということで、1泊して2クラスとってしまうことにしました。夜9時にレッスンが終わって、その日のうちにMに帰れないことはないのですが、夜遅くの女性の単独行動はなるべく避けるようにしているので。

昼間目一杯仕事して、少し早目にあがり、急行に飛び乗り、ホテルに荷物をおいて(YDC)へ。かつて、リーズに仕事で来た時にYDCのことは偶然知りました。で、その後もリーズに来る機会が何度かあり、一度YDCのレッスンを取ったことがあります。 (その時うれしい再会があったんですが、これはまた別の機会に)

以前レッスンした時はNBT(ノーザン・バレエ・シアター。熊川哲也さんの従兄弟の高橋宏尚さんが踊ってるカンパニーです)の元プリマという方が教えていらっしゃいましたが、今は若い元気の良い先生に代わっていました。

ビギナー・クラスは、本当のビギナーにはちょっと難しいかな? でも、先生は詳しくゆっくり説明しながらレッスンを進めていきます。黒人男性のピアニストがすごく良かった…。とてもエックスプレッシブで、かつ踊りやすく弾いてくれる。「音楽に身を任せる」心地良さを堪能しました。やっぱりピアニスト付きのレッスンはステキです。アシェヌマンも「躍らせてくれる」内容でした。

インプルーバーは、以前の方が難しかったかもしれません。しかし、それでもなお、ビギナーとインプルーバーのギャップはとても大きい。イギリスでバレエを始めた大人は、一体このギャップをどう埋めたらいいんだ??? これはイギリスでレッスンを受けるたびに私が疑問に思うことです。

イギリスでは大人で趣味でバレエを始めた人は永遠にビギナークラスに出るということなんでしょうか? ビギナー以上のクラスに来てる人って子どもの頃やってた「再開組」、あるいはコンテンポラリーなど他の踊りをやってる人、演劇をやってて踊り「も」それなりに必要、って感じの人が多いように思います。YDCのインプルーバーのクラスも、再開組っぽい人が多いように思いました。

リーズではロンドンみたいにクラスがたくさんある訳じゃないから、大方の人はこの2つのクラスの中で何とかしないとならない訳です。回転だってインプルーバーのクラスじゃ、全部ダブルを要求されるし。フロアでの練習になってから、あるアンシェヌマンについて、生徒の1人が「ここでのピルエットはダブルですか、シングルです
か?」って質問したら、先生は、「このクラスでは回転は全部ダブルに決まってるでしょ!」とおっしゃいましたが、ビギナークラスじゃ、回転の練習なんてほとんどないんですよね。

帰り道、どうもよく分からなかったアンシェヌマンを復習しながら宿に帰りました。ステップ踏みながら歩く私はきっとそうとう怪しかったと思います。ちょっと復習したら、「な~んだ、そうだったのか!」と簡単に分かりました。こうやってレッスンが終わってから自分のペースで振りかえればすぐに分かることが、レッスン内では分からないってことがよくあるんですよね。レッスン時間内に、短時間だけ頭の中を「自分時間」の流れに出来るといいんだと思うんですけれど…。

2レッスン続けて取って、その時は平気でしたが、翌日、仕事がらみの観光をしてMに帰り、仕事場に寄って少し仕事して宿に帰って横になったら、コテンと眠りに落ち朝まで爆睡してしまいました。やっぱり疲れていたのね。

バレエな休日 (3) センタ・デ・ダンス・デュ・マレでレッスン(2003年3月)

レペットでお買い物した日の夕方は、生まれて初めてのパリでのレッスン。

実は高校の後輩でもある同僚は、「先輩がパリでバレエのレッスンをしたがっている」ということで、なんと自らレッスンに参加し、身を挺してマレ情報を収集しておいてくれてたんです。なんて素晴らしい後輩なんだ!!! 
 
そもそも、このマレやパリでのレッスンについては、「旅のお話を少し…」という
HP(http://homepage2.nifty.com/stayinfo19909/)
で知りました。海外でのバレエ情報が満載のページです。このページで情報を得ていなければ、言葉も出来ないのに(フランス語は「入門」程度はやりましたが、ほぼ「全然しゃべれない」状態です)「パリでレッスンしよう!」なんて考えもしなかったと思います。ネットは私のバレエライフの幅を驚くほど広げてくれているんです。

同僚からの情報によればマレは中世、まではいかないのかな、でも100年やそこらじゃなく古い建物で、オーナーがその原型をそのまま残すという主義でやっているそうです。だから階段なんかすり減ってたり、斜めになってたり…。でも、そこに味わいがあります。

「旅のお話を少し…」のページにも紹介されていた中庭の見えるカフェで同僚と待ち合わせ。最初私は、カフェなんとかっていうシアターをカフェと間違えて入ろうとしてしまいました。後で同僚に聞いたら、そこは、俳優・女優の登竜門。そのシアターからは、フランスでは知らない人はいないっていうくらい有名な俳優さんや女優さんが巣立っていってるそうです。

で、カフェで同僚と落ち合いレッスンへ。言葉に自身がなかったので(腕にもだけど)、ラザレリ先生の「レッスン歴1年」っていうクラスにしておきました。

更衣室は男女一緒(!)。この情報も「旅のお話を少し」で事前にゲットしていなかったら驚いてしまったでしょう。更衣室に先生(♂)がで~んと座ってお金を集めており、女性達がそのまわりで着替えるんです。先生の向かいの席で堂々と(?)ブラとパンティのまま長々とおしゃべりしているマダムがいまして、なかなかのカルチャーショックでした。日本人の男の子が来てたけど、恥ずかしがって、シャワーの中で着替えてたみたい。

さて、スタジオはベートーヴェン。梁がむき出しの天井がとてもステキなスタジオです。ラザレリ先生はマダムに人気が高いらしく、若い人もいましたが、年齢渋目のマダムが多かったのが印象的でした。

とても楽しい先生で、言葉が出来ないのがすごく残念! きっとレナート(別に書こうと思いますが、ロンドンのダンスワークスの先生)みたいにいっぱい面白いことを言ってるんだと思うのよね。みんな先生の言葉に笑いながらなごやかにレッスンは進んで行きます。今やってる仕事に一区切りがついたら(といっても2年くらい先)、フランス語を習おうかなぁと思ったりしました。

バレエ用語はフランス語だから、フランス語がちょっとでも出来るとバレエそのものへの理解も深まるかも・・・と思いました。中身と関係なく「プリエ」と覚えるのと「曲げる」という意味がわかっていて「プリエ」という言葉を覚えるのとは違うように思いました。第二次大戦中の野球で「ストライク」が「良し」だったみたいに、「プリエ」が「曲げ」と表現されてたら?という感じでしょうか。

バーでのリンバリングになった時、ちびの私を思いやって、背の高い女性が離れた別のバーから移ってきて、さっと代わってくれました。高校時代にフランス留学の経験のある元顧客から、「フランスではフランス語がしゃべれないと人扱いされない」って聞いてたんで、かなりびびって参加してたんですが、異国での親切は心にしみますね。

ラザレリ先生は、一回お手本を見せた後で、生徒の中から一人指名してやらせてみるので、あてられたらどうしよう・・と、びくびくしてしまいました。アンシェヌマンの時一番前に出されてしまったことがあって、その時はあがってしまって、その前まで出来てたのに間違えちゃった。
 
ラザレリ先生は、英語は使ってくれないけど、時々「前へ」とか「準備」(プレパレーション?)とか日本語でフォローしてくれました。これも「旅のお話を少し」で事前に得ていた情報だったので、「あ、日本語だ!」って分かったけど、聞いてなかったら、彼のフランス訛りの日本語をフランス語だと思ってしまって日本語だと気づかなかったかも…。

同僚も始めたばかりのバレエを楽しんでいる様子でした。とてもステキな笑顔で踊ってました。「踊り心」がある…と思いました。ということで、長期海外出張を終え、今は日本で一緒に仕事してる彼女を、私の行ってる教室に誘い込もうと画策中です。

初めてのパリでのレッスン…とても楽しかったです。他の方たちのフランス・レッスンレポートも読んでなかったら勇気が出なかったと思います。フランス語バッチリの同僚と一緒のレッスンじゃなければ、やっぱりためらったかもしれません。「旅のお話を少し」と同僚に感謝!

バレエな休日 (2)- レペット本店でお買い物(2003年3月)

翌日は朝からレペット本店でお買い物。なんと日本人の店員さんがいて、お買い物は彼女に助けてもらいました。

私は最近はバヤデールを履いているのですが、海外バレエ情報に詳しいHPで言及されていたピンクのバヤ(日本ではヨーロッピアン・ピンクしか売ってなくて、「この色がキライ」という人も多い)が欲しかったのと、フィッティングをしてもらって、本当にバヤが私の足にあってるかをチェックしたかったので、レペット本店を訪ねることにしたのです。(そもそもこのバヤとの出会いもネットを通じてのこと。ポアントに詳しいHPでバヤ情報を見かけ、興味をもったのでした)

いつも履いてるサイズを伝えて地下の倉庫からバヤを出してもらい履いてみました。フィッティングのおじさんに「立ってごらん」と言われ、ポアントで立ってみると、かかとのところをちょこちょこっとチェックしてくれて、「パッフェ!」(パーフェクト)とのこと。なんだかあっけなくフィッティングは終わってしまいました。

フリードだとバレエシューズでも「あーでもない。こーでもない」となかなか売ってもらえないんだけど、これは、英仏の文化の違いなのか、やっぱり私の足がフリードとは合わなくて、レペットと合っているのか???

本当は、「初心者向け」というバヤを卒業したいなぁという気持ちもあるんだけど、でも、考えてみれば私は「万年初心者」な訳だし、この先も「永遠の初心者」でしょうし…。何よりもバヤは縦も横もボックスの厚みも私の足の形にぴったりなんですよね。ということで、当分はバヤで行くことにします。

ま、レペットの本店のフィッティングの方から「パッフェ!」のお墨付きももらったことだしね。

バレエな休日(1)- オペラ座(ガルニエ)でバレエ鑑賞(2003年3月)

古い話だけじゃなくて、最近の話も少し書きたいと思います。ネットでバレエ情報を得るようになって、私のバレエ行動範囲は格段に広がりました。この3月、初めてパリでレッスンを受けることが出来たのも、ネットのおかげですね。

イギリス出張のついでに、ちょうど海外研修でパリ滞在中の同僚(♀)を訪ねるこ とにしました。かねてより、「オペラ座(ガルニエ)でバレエを見る」「マレでレッスンする」「レペットで買い物する」は私の夢だったんですが、これが一挙にかないました。「ユーロスターに乗る」は今回はペケ。次回以降に引き継ぎたいと思います。

同僚は仕事の合間を見ては、バレエやオペラを楽しんでいたらしく、チケット入手などはもう手馴れたもの。日程が決まると手早くチケットを押さえてくれました。「勅使河原三郎&マッツ・エック」のプログラム。もっとクラッシックなもの…とも思ったけれど、日程が合わなかったのと、逆にこういうコンテンポラリーっぽいのって、オペオ座の日本公演なんかにはかからないよなぁってのもあって。

勅使河原の“Air”で主役(?)級の踊りを踊ったのはミテキ・クドー。彼女は 「味わい」「雰囲気」のあるダンサーですね。ステキでした。作品は幻想的できれいでした。「音」がない部分もたくさんあって、客席からの咳がその時に多くあってそれが残念でした。シーンとした緊張の中で踊りだけが続いていくっていう感じになるはずだったんだと思うけど。

マッツ・エックの”Apartment”は動きのある作品で、音楽は電気楽器を使ったもの。セリーヌ・タロンというダンサーが鮮烈で、私は彼女が出てきたとたんに目を奪われて、あんまり全体を見ることができませんでした。技術もすごいんだけど、とにかく際立ったインパクトのあるダンサーです。

オペラ座のダンサーはみんなすごくスタイルが良くて、「同じ人類」とは信じられないくらい美しいです。ため息・・・。劇場もとても豪華で、何といってもロビーの空間がほんとうに豊か。次回は古典物も見てみたいです。