バレエな休日 (6)-ロイヤルの「眠り」(2003年3月) 

この時のイギリス出張と同時期に大学院の先輩で同業者でもあるEさんも渡英するとのことで、「ロンドンでメシでも食おう」ということになりました。ついでに、コンサートか何か、良いものがあれば一緒に…ということで、おそるおそる「バレエはどうでしょう?」と聞くと、未体験だけど行ってみても良い…とのこと。

滞在したMからロイヤルに何度も電話したんですが、いつも話し中でつながらない…。これはもうダメかなぁと思ったんですが、ロンドンに出た際にボックスオフィスに行くと残り少ないけどまだチケットはある…とのこと。やった!ということで、一番良い席を買ってしまいました。まぁ、お高いことはお高いけど、日本でロイヤルを見れば、この値段じゃ一番良い席は無理だよね~…ということで、ゲットいたしました。

出し物は「眠り」。マカロワ版です。新聞でも前評判が高く、チケット入手は半分諦めていたので、うれしかったです。イギリスに行くと私が良く買うダンス雑誌にマカロワのインタビュー記事が載っていました。

その記事によれば、マカロワ曰く、「眠り」をやるって言ったら、みんなから「勇気あるねぇ」と言われた。「眠り」はとてもアカデミック(正確なテクニックが必要)な踊りであり、しかも、テクニック「のみ」にしてしまってはいけなくて、「表現」がとても難しい。特にオーロラの「表現」は難しく、彼女自身現役の時は苦労した。彼女自身はフロリナ姫のようにストレートに感情を表現して良いものの方が得意だった。オーロラの場合は、「押さえた」表現が必要で、しかも、1幕と3幕では、「微妙に」表現を変える必要があり、その「微妙さ」も難しい。「眠り」においては、表
現はすべて「形式」の中に納めなくてはならないのだ。100年の眠りから覚め、プロポーズもされ、「自信」を得たオーロラと、無垢で無邪気な、でも気品あるオーロラの違い…。それを、あまりにも「くっきりと」違えることなく、しかし、きちんと踊り分けること…。

マカロワによれば、やはりフォンテンのオーロラは最高に素晴らしかったとのこと。フォンテンはテクニックが弱かったと言われるがそんなことはない。テクニックを感じさせないほどテクニックがあったのだ。そして、何と言っても正確なテクニックの上に彼女が「表現」したもの…それは、まだ誰も超えたことのない境地である。

彼女自身は、オーロラの表現にうんと悩んだそうなんですが、たまたまクラスにとても気品があり純粋向くなレッスンメイトがいたとか…。で、彼女の一挙一動を観察してそれを「盗んだ」とのことでした。

…というようなインタビューを読んでいたので当日がとても楽しみでした。ロイヤルは舞台装置や衣装が豪華ですね。マカロワ板「眠り」はとても良かったです。よく研究されていました。妖精の踊りは、回り物はほとんどシングル。それを、音楽にぴったり合わせてゆっくりとぐる~っと回ってピタリと止める。完璧なコントロールが出来てなければ難しいですよね。リラはダブルでしたが…。う~む、こういうところできっちり「差」つけるのもちょっとすごいかも…。だいたい、プロの舞台で回り物シングルに押さえるっていのも逆にすごいかも…。

オーロラはコジョカルで、とても可憐。ローズアダージオでは、脚がちょっとワナワナしていて(でも、絶対くずれない)、ちょっとハラハラしたけど、でも、これは本当に難しい踊りなんですね。

私的には、ブルーバードを踊った、イワンというロシア人がすごく良かったです。フロリナ姫もとても上手だったけど、もうちょっとおさえた踊り方の方が好きかも。冬にフロリナ(を簡単にしてもらったもの)を踊ったばかりだったので、フロリナ姫のVaを見るのは格別楽しみでしたが…。

初めてイギリスに来た時にもロイヤルの「眠り」を見てるんですが、その時はちょっと退屈だったので、バレエは初めてという先輩に見せるのちょっぴり心配してたんだけど、マカロワの「眠り」は締まった演出で、先輩も楽しんでくれました。

彼はクラッシックの音楽は良く聞く人ですが、子どもの頃から「チャイコフスキーの音楽には何故色があるんだろう」っていつも不思議に思ってたんだそうなんです。で、バレエを見て初めて「チャイコフスキーの音楽の色彩が鮮やかな理由が分かった」とのこと。しきりに納得してました。

そっか、チャイコフスキーの音楽には「色がある」のね。