「真面目な」初学者のための~ (4)-プリエの罠:その3 

プリエにおいて、初学者を混乱させるものの一つに、プリエとプリエの間に入る、ポール・ド・ブラというのがあるんじゃないでしょうか。でもって、ポール・ド・ブラって「手・腕の動き」のはずなのに、プリエとプリエの間に入るポール・ド・ブラって、なぜか身体を前屈したり、後ろに反ったり、横に曲げたり…っていうのもくっついてたりする。

たとえば、R教室でよくやるパタンで一番単純なヤツは、1番プリエの後、手をアンオーにして前屈、2番プリエの後、手をアンオーにして後屈、4番プリエの後手をアンオーにして前屈、5番プリエの後手をアンオーにして後屈、というパタン。

これに加えて横に身体を曲げる、だの、身体を回す、だの、その身体を回すにしても、前から回すだの、後ろから回すだの、半分だけ回すだの、前屈にしても、ルルベアップして前屈する、だのなんやかやと色々あって、何番と何番の間にどのポール・ド・ブラが入るんだっけ?と、頭が混乱します。

長年やってる私でも(>私だけ?)かなり混乱するんだから、バレエを始めたばかりの人はもっと混乱するよね。

ま、これについては、プリエとプリエの間に「何か」が入る。それは、前に曲げる、後ろに反る、横に曲げる、回す、立つ、のどれかであることが多いので、まずは教室でよくやる基本パタンを覚えつつ、「1番・前→2番・後ろ→4番・横→5番前・後ろ」とかいう風に、おおざっぱにポール・ド・ブラの流れを頭の中で押さえておくと良いかもしれません。

でも、プリエの方のバリエーションも色々ある訳で、プリエとポール・ド・ブラのバリエーションをかけ合わせると、「順列・組み合わせ」的には、そうとうのパタンがありえる訳です。なので、初学者の方は、覚える努力をしつつも、前の人、横の人、鏡に写る後ろの人をカンニングしつつ、チラっとカンニングしただけで、「あ、次は前屈かぁ」と分かる程度に、パタンを頭に入れておく…というところから始めてはどうでしょう?

「ちらっとカンニングしただけで」次の動作が「読める」だけでもたいしたもの。

頭ごちゃごちゃして、「うぎ~!!!!」となると、よけい分からなくなるから、「分からなくなったらカンニング~!」と思って、とりあえず「分かるところだけでも」やっていくこと。それが大事かも…。

「真面目な」初学者のための~ (3)-プリエの罠:その2 

「プリエの罠:その1」でも書きましたが、とりあえずは、足のことを考えましょう。で、少し慣れてきたら、手にもチャレンジしてみましょう。

プリエしながら「手をつける」。足だけならともかく、手をつけると頭ぐちゃぐちゃ…になってしまう…。よく分かります。

でも、手も複雑に見えるけど、いくつかのパタンがあります。まずは、①「横(アラセンコンド)→下(アンバー)→前(アンナバン)」とまわす。ビギナー・クラスだったらこのパタンは良く使うんじゃないかな? すなわち、プリエ
しながら、横においた手を下に持ってきて今度は胸の前に持っていく。(ここで動画でもあると分かりやすいんですが…)

これを、プリエしながら、あるいはグランプリエしながらやる。両方一度にやると分からなくなっちゃうようなら、自宅で足だけ、手だけでやってみて、それから両方一度にやってみましょう。

まずは、これが一番簡単な手のパタン。複雑な手のパタンが来ても、「無視」して、このパタンで「やってしまう」という手もあります。実際、ありゃ~!!!となって混乱して何も出来なくなって「何もやらない」よりは、この一番簡単なパタンで「やる」方がお得です。先生が複雑な手のパタンを指示しても、結局このパタンでやってしまってる人、うちの教室には時々います。ただ間違えてるだけかもしれないけれど、意図的にやってるとすれば、「賢い」方法なんじゃないかと思います。

とりあえず、これで、「手は横に置いたまま足を頑張る」→「手は基本のパタンで押し通す」という2通りの「裏技」が出来ることになりました。この2つの「裏技」でしばらくやっていれば、少なくとも、プリエの足だけは「形を追う」
ことが出来るようになるでしょうし、「一番簡単なパタン」でポールドブラをつけてプリエをする、っていうのも、ある程度、「自信をもって」出来るようになると思います。

グランプリエの時の手はたいていこれです。ちょっと変則的なのもあるけれど、うちの教室だと、グランプリエの時の手は9割がたこれですね。

なので、プリエは、簡単なバージョンは、1)ドゥミ・プリエ1回(手は横のまま)→グラン・プリエ1回(手は「横→下→前→横」)、2)ドゥミ・プリエ2回(手は横のまま)→グラン・プリエ1回(手は「横→下→前→横」)、3)ドゥミ・プリエ1回(手は「横→下→前→横」→グラン・プリエ1回(手は「横→下→前→横」)、4)ドゥミ・プリエ1回(手は「横→下→前→横」→グラン・プリエ1回(手は「横→下→前→横」)の4つの組み合わせと考えて良いんじゃないでしょうか?

もっと複雑なポールドブラの時はこの4つの中から一番「近そう」なのを選んでやってしまってもいいんじゃないかな?

ただし、このシリーズの(1)に書いたように、先生の性格を良く見抜いた上でね。でも、たいていの先生なら、初心者が「混乱」するのはきっとよく理解されていると思います。だから、「一生懸命」オーラを出しながら、簡単バージョンにバージョン・ダウンしてやっても、それが「手抜き」でやってるのか、「少しでも上達しようとしてやってるのか」その戦略として、「オール・オア・ナッシング」ではなく「ゼロより1」の戦法を採用してるのね、ということは分かって下さると思います。

もちろん、こういうやり方はダメ!という先生が悪い先生ということではありません。教育には「100%正しい方法」というのはないのです。どの方法にも良い点と悪い点(弱い点)がある。だから、「こういうやり方はダメ!」という先生の下で勉強されれば、そういうやり方でこそ身につく何かが身につくのだと思います。

「真面目な」初学者のための~ (2)-プリエの罠:その1 

私がバレエを始めたばかりのころ、何に「ひっかかった」かなぁ…? それをレッスンで出てくるパの順に解きおこしてみようかと思います。で、私はそれをいかに「いいかげん」で「乗り切ってきたか」を思い出してみようと思います。

私がバレエを始めた教室の場合は、バーが比較的決まってて、パタンが少なかったので、一度覚えてしまえば初心者でもなんとかついていけました。その点ではラッキーだったとも言えるし、本当はバーというのは変化のある方が良い面もあるので、アンラッキーだったとも言える。

それはともかく、「プリエ」は「曲げる」こと。これを「正しく」やるのは至難の技で、私なんぞは、「正しく」の1000歩も1万歩も手前におりますが、大体の教室ではこれを「2番→1番→4番→5番」あるいは「1番→2番→4番→5
番」の順番でやるんじゃないでしょうか。R教室でもN教室でもこのどちらかのパタンです。R教室は2番で始めることが多くて、N教室は1番で始めることが多いけど、これも同じ先生によっても日によって違ったりします。

「1番と2番どっちが先?」の奥深い意味は私にはまだ謎ですが、ここで「深く追究しない」「いいかげん」が大切。疑問は一度にすべて解決するのではなく「貯金」しておいて、「分かる時期がきたら一つずつ」解決していくのがよろしいかと思います。…という訳で、私もこれについては「謎」のまま放ってあります。いずれ気がむいたら先生に聞いてみようかと思います。

メソッドの違いというのもあるのかな? イギリスでレッスンすると2番が先のところが多い気がするし、1番が先ってのはロシア系? んなことないのかな?T教室はワガノワということでしたが、1番から始めてましたね。

それはともかく、初学者が「混乱」するのは、プリエの時の「ポールドブラ」なんじゃないでしょうか。この「ポールドブラ」は①プリエする時の手の動き、というのと、②○番プリエと×番プリエの間に入る柔軟みたいなヤツの2種類がありますが、①においても②においても、「え~? 次はどうだった? あれ~?あちゃちゃちゃ~?」となる(私もなった…というより今もなる)のではないかと思うのです。

プリエには「ドゥミ・プリエ」と「グラン・プリエ」があるけど、この組み合わせがどんな回数で来るか?というのも初学者には「鬼門」かもしれません。

そこで第一に何回「曲げるのか?」…この回数を把握しましょう。

「ドゥミ・プリエ1回→グラン・プリエ1回」なのか「ドゥミ・プリエ2回→グラン・プリエ1回」なのか。とりあえずは、「これだけ把握!」。それだけでもたいしたもんです。

で、「その時手はどうするのぉ?」っていうのはあると思うんだけど、わからなかったら「無視する」。アラセコンドのまんまやってみてはどうでしょう?

教室によっては怒られるかもしれないけど、怒られたら「どうしても混乱してしまうのでまず手はなしでやってもいいですか?」と聞いてみましょう。そういうの「絶対に!」許さない教室であれば、家で手なしで「自習」してみましょう。

1番から5番まで、「ドゥミ・プリエ1回→グラン・プリエ1回」とか「ドゥミ・プリエ2回→グランプリエ1回」とかいうこともあれば、「2番だけはこの組み合わせを2回」とか「5番だけはドゥミをやらずグランプリエを2回」と
か、ちょっとしたバリエーションはあるけど、まずは、この「脚」の部分に集中して覚えてみてはどうかしら?

で、「手」はアラセコンドのままにするか、あるいは「他人のを見て真似る」。ただし、「脚」だけは「自分で覚える」あるいは「覚える努力をする」。

まずはそうやってみたらどうかな?

私は最初の頃、分からない時は手は「無視」することにしてました。で、だんだん「足」の動きが分かるようになってから「手」をつけるようにしてました。

T先生が「分からなかったら手はアラセコンドのままでいいから足だけまずやってごらん」って言って下さったことが時々あったようなほのかな記憶があるんですよね。で、多分、そのために私は「分からなかったらまず足から覚える」ようにしてきたのかもしれないです。(N教室のS先生も初心者が混乱してると「分からなかったらとりあえず足だけやってみて」っておっしゃいます。だから、この「まずは手を無視して足」というのは、バレエ的にも「妥当」なのかもしれません。)

今でも手も足も両方やると「混乱」しそうな時は「勝手に」「手」を省略しちゃったりすることもあります。あるいは「腰の骨が動いてないか確かめながらやってるフリ」して「腰に手をおいて」(もちろん確かめるためにやってることもあるのよ)、足だけやる時もあります。

全部覚えようという「真面目」が全部ごちゃごちゃになって「訳分からん」になってしまうよりは、「手は省略」という「いいかげん」が「足だけは分かるようになった」という「良い結果」につながることもある…と私は思うのね。

「破滅型」(何もかも真面目にやってすべてが御破算になる)の「真面目」より、「いいかげん」(少しだけでも)の「真面目」の方が成果が上がることもある…。そう私は思うのであります。

「真面目な」初学者のための~ (1)-「真面目」の罠

長い間「大人のバレエ」をやってきて気づいたことの一つに、「大人って真面目!」というのがあります。私の場合は「大人クラス」がない教室でバレエを始めたという「偶然」もあって、ある意味、「いいかげん」にやってきた。今振り返ってみると、その「いいかげん」の良さっていうのもあるのかもしれないなぁ…と思うのです。

私の場合は、子どもの頃から継続している中・高校生主体のクラスでしたから、「出来なくて当たり前」っていう「居直り」の中で、「マイペース」でレッスンを重ねてこられた。「大人のための初心者クラス」で基礎を一つ一つ重ねる…というやり方のメリットは享受できなかったけれど、その代りに「いいかげん」を身につけることが出来たかもしれません。

「いいかげん」と言うと言葉は悪いけれど、もっと良い言葉で言うならば、Cさんのおっしゃる「ソフトな頑張り」という言葉に近いかもしれません。頑張りすぎない範囲で頑張る。「瞬間風速」で頑張るのではなく、「長期的に」頑張る。一見今日「手抜き」してるみたいに見えても、長いスパンで見れば、その「手抜き」が「実は頑張ってる」ことになる。

今日手を抜いたからこそ怪我なく踊れ明日もバレエが踊れる(頑張りすぎてたら怪我したかもしれない)、今日手を抜いたからこそバレエが嫌にならず1年間続けることが出来る(今日全力疾走していたら「もういやだ!」「限界だ!」となってバレエをやめてしまったかもしれない)…。

「夢のような日々」にも書いたように、私の場合は、T先生が「みんな時間をかけて上手になったのだから焦らないで」「ゆっくり、ゆっくりね」といつも声をかけて下さり、上達を「焦る」という気持ちはもたずにやって来ました。

でも、「大人のクラス」のある教室に移ってみて、「みんな真面目(過ぎ?)だなぁ…」って思わされることがしばしばあるんです。実は、私の職場の若い同僚が同じ教室でバレエを始めたのですが、その人もとても真面目。

「レッスンについていけないので、お暇な時間にバレエを教えて下さいね」と彼女に頼まれ、どういう順番で何を彼女に伝えよう…と思った時、自分の来し方を振り返り、「初学者」は「どこでつまづくのか?」を考えてみようかと思い立ちました。

「大人のクラス」でバレエを始めるのは、もちろん、私みたいに「子どもクラス」で始めるよりは、「基本」を身につけるという点でずっとメリットがあります。同じ立場の人たちと励ましあえるというメリットもある。

ただ、一つデメリットがあるとすれば、「他人と比べやすい」環境にある…ということかもしれないなぁと思うんです。私みたいに「あまりに立場が違う」人と一緒にレッスンしていた場合は、「あまりに違う」ので比べようがない。比較自体が無意味。

でも、自分と同じように大人で始めた人、自分よりずっと年上の人が、自分は頭がこんがらがって手足もこんがらがってしまいそうな複雑なパ(慣れればそんなでもなくても)を軽々とこなしている…。「なんで私だけ出来ないの?」となる訳です。

軽々とこなしているように「見える」人たちも、時間をかけてそこまで来たり、実は軽々なんかこなしてなくてただ「ごまかす」のが上手くなってるだけのこともあります。どのパがどの程度難しくて、それが出来るようになるのにおおよそどのくらいの時間がかかるか…なんてことの「見通し」も「全く立たない」。だから、本当は「出来ない」のが「当たり前」でも、無駄に「出来ない自分」を責めてしまったりする。そんな構造があるような気がします。

「大人のバレエ」はそれでなくとも色々な「限界」を抱えながらのバレエ。そこに「真面目」という心理的な「負荷」を加えるのは、せっかくのバレエの楽しみを感じる心を曇らせてしまうような気がします。もちろん、「真面目」は大切。でも、「真面目の罠」にはまらない…それも大切な気がします。

長期的には「真面目」に、でも短期的には「いいかげん」であることを自分に許す…。

短期的に「真面目」でも、長期的には「挫折」という場合だってあるんです。大人のバレエは同じ「真面目」でも「長期の真面目」を目指すべきだと思うんです。

たとえば、レッスンで、「ちゃんと出来る自信がない限り動こうとしない」という「真面目な」人がいます。「いいかげん」でも「何となく動いてみる」方が、結局は「得る」ところが大きいと思うんです。特にバレエみたいに「身体を動かす」系は「とりあえず」動いてみることも大切。(私の通うR教室のM先生も「分からなくても何となくでもいいからとりあえず動いてみて」ってよくおっしゃる)

大人の場合、「頭で理解する」もすごく大切なんだけど、「完全に頭で理解しない限り動かない」では、結局その「真面目」が「やらない」という「不真面目」な結果や「上達しない」という「不幸」な結果になってしまったり、「私にはバレエは出来ない」という「諦め」、あるいはバレエを「やめちゃう」っていうよな「挫折」を生むことになっちゃうなぁ…と、「真面目」な人々を見ていて残念に思います。

真面目なあなたには、上達の素質は充分あります! その真面目が裏目に出ないようにしましょう。その真面目に「いいかげん」のスパイスを加えて、「大人の真面目」を身につけましょう。

注:このシリーズはあくまでも私の「個人的」体験、あるいは「個人的」考えに基づくものであって、「正しい」バレエの知識に基づくものではありません。バレエ的に「誤った」ことも書いてあると思います。「ご利用」の際には「鵜呑み」にせず、「批判的」に吟味した上で「利用しても大丈夫そう」と思った時のみ「ご自分の責任において」試してみてね。「Q母さんのおかげで私のバレエがメチャクチャになってしまったじゃないの~!」と言われても、無責任なようですが、責任は取れません。

あと、自分の先生の思想や性格をよく見抜いた上でやることも大切です。先生によっては、私の助言に従って、たとえば、「今日は脚を重点にやるから、ポールドブラはずっとアラセコンドのまんまやっちまえ」なんてことをすると、逆鱗に触れちゃうタイプの先生もいらっしゃると思います。自分の先生の性格を一番よくご存じなのは、自分自身なので、その辺りはきちんと判断して下さいね。

とここに来て下さってる方はみなさん、そういうネットにおける「自己責任」みたいなことはご承知の方ばかりだと思うけど、念のため。