「真面目な」初学者のための~ (1)-「真面目」の罠

長い間「大人のバレエ」をやってきて気づいたことの一つに、「大人って真面目!」というのがあります。私の場合は「大人クラス」がない教室でバレエを始めたという「偶然」もあって、ある意味、「いいかげん」にやってきた。今振り返ってみると、その「いいかげん」の良さっていうのもあるのかもしれないなぁ…と思うのです。

私の場合は、子どもの頃から継続している中・高校生主体のクラスでしたから、「出来なくて当たり前」っていう「居直り」の中で、「マイペース」でレッスンを重ねてこられた。「大人のための初心者クラス」で基礎を一つ一つ重ねる…というやり方のメリットは享受できなかったけれど、その代りに「いいかげん」を身につけることが出来たかもしれません。

「いいかげん」と言うと言葉は悪いけれど、もっと良い言葉で言うならば、Cさんのおっしゃる「ソフトな頑張り」という言葉に近いかもしれません。頑張りすぎない範囲で頑張る。「瞬間風速」で頑張るのではなく、「長期的に」頑張る。一見今日「手抜き」してるみたいに見えても、長いスパンで見れば、その「手抜き」が「実は頑張ってる」ことになる。

今日手を抜いたからこそ怪我なく踊れ明日もバレエが踊れる(頑張りすぎてたら怪我したかもしれない)、今日手を抜いたからこそバレエが嫌にならず1年間続けることが出来る(今日全力疾走していたら「もういやだ!」「限界だ!」となってバレエをやめてしまったかもしれない)…。

「夢のような日々」にも書いたように、私の場合は、T先生が「みんな時間をかけて上手になったのだから焦らないで」「ゆっくり、ゆっくりね」といつも声をかけて下さり、上達を「焦る」という気持ちはもたずにやって来ました。

でも、「大人のクラス」のある教室に移ってみて、「みんな真面目(過ぎ?)だなぁ…」って思わされることがしばしばあるんです。実は、私の職場の若い同僚が同じ教室でバレエを始めたのですが、その人もとても真面目。

「レッスンについていけないので、お暇な時間にバレエを教えて下さいね」と彼女に頼まれ、どういう順番で何を彼女に伝えよう…と思った時、自分の来し方を振り返り、「初学者」は「どこでつまづくのか?」を考えてみようかと思い立ちました。

「大人のクラス」でバレエを始めるのは、もちろん、私みたいに「子どもクラス」で始めるよりは、「基本」を身につけるという点でずっとメリットがあります。同じ立場の人たちと励ましあえるというメリットもある。

ただ、一つデメリットがあるとすれば、「他人と比べやすい」環境にある…ということかもしれないなぁと思うんです。私みたいに「あまりに立場が違う」人と一緒にレッスンしていた場合は、「あまりに違う」ので比べようがない。比較自体が無意味。

でも、自分と同じように大人で始めた人、自分よりずっと年上の人が、自分は頭がこんがらがって手足もこんがらがってしまいそうな複雑なパ(慣れればそんなでもなくても)を軽々とこなしている…。「なんで私だけ出来ないの?」となる訳です。

軽々とこなしているように「見える」人たちも、時間をかけてそこまで来たり、実は軽々なんかこなしてなくてただ「ごまかす」のが上手くなってるだけのこともあります。どのパがどの程度難しくて、それが出来るようになるのにおおよそどのくらいの時間がかかるか…なんてことの「見通し」も「全く立たない」。だから、本当は「出来ない」のが「当たり前」でも、無駄に「出来ない自分」を責めてしまったりする。そんな構造があるような気がします。

「大人のバレエ」はそれでなくとも色々な「限界」を抱えながらのバレエ。そこに「真面目」という心理的な「負荷」を加えるのは、せっかくのバレエの楽しみを感じる心を曇らせてしまうような気がします。もちろん、「真面目」は大切。でも、「真面目の罠」にはまらない…それも大切な気がします。

長期的には「真面目」に、でも短期的には「いいかげん」であることを自分に許す…。

短期的に「真面目」でも、長期的には「挫折」という場合だってあるんです。大人のバレエは同じ「真面目」でも「長期の真面目」を目指すべきだと思うんです。

たとえば、レッスンで、「ちゃんと出来る自信がない限り動こうとしない」という「真面目な」人がいます。「いいかげん」でも「何となく動いてみる」方が、結局は「得る」ところが大きいと思うんです。特にバレエみたいに「身体を動かす」系は「とりあえず」動いてみることも大切。(私の通うR教室のM先生も「分からなくても何となくでもいいからとりあえず動いてみて」ってよくおっしゃる)

大人の場合、「頭で理解する」もすごく大切なんだけど、「完全に頭で理解しない限り動かない」では、結局その「真面目」が「やらない」という「不真面目」な結果や「上達しない」という「不幸」な結果になってしまったり、「私にはバレエは出来ない」という「諦め」、あるいはバレエを「やめちゃう」っていうよな「挫折」を生むことになっちゃうなぁ…と、「真面目」な人々を見ていて残念に思います。

真面目なあなたには、上達の素質は充分あります! その真面目が裏目に出ないようにしましょう。その真面目に「いいかげん」のスパイスを加えて、「大人の真面目」を身につけましょう。

注:このシリーズはあくまでも私の「個人的」体験、あるいは「個人的」考えに基づくものであって、「正しい」バレエの知識に基づくものではありません。バレエ的に「誤った」ことも書いてあると思います。「ご利用」の際には「鵜呑み」にせず、「批判的」に吟味した上で「利用しても大丈夫そう」と思った時のみ「ご自分の責任において」試してみてね。「Q母さんのおかげで私のバレエがメチャクチャになってしまったじゃないの~!」と言われても、無責任なようですが、責任は取れません。

あと、自分の先生の思想や性格をよく見抜いた上でやることも大切です。先生によっては、私の助言に従って、たとえば、「今日は脚を重点にやるから、ポールドブラはずっとアラセコンドのまんまやっちまえ」なんてことをすると、逆鱗に触れちゃうタイプの先生もいらっしゃると思います。自分の先生の性格を一番よくご存じなのは、自分自身なので、その辺りはきちんと判断して下さいね。

とここに来て下さってる方はみなさん、そういうネットにおける「自己責任」みたいなことはご承知の方ばかりだと思うけど、念のため。