夢のような日々(9)-初めての発表会

初めての発表会には、友達を沢山招待してしまいました。自分の踊りを見て欲しかったから…というよりは、恐いものみたさならぬ、「恐いもの見せたさ」っていうか、半分以上は「ジョーク」みたいな気持ちもありました。

「ねぇねぇ、私ってば、大人になってからバレエなんか始めちゃって、舞台にまで立っちゃうんだよぉ」っていうか…。「大人のバレエ」があちこちで少しずつ始まった頃だったのだと思うのですが、「大人のバレエ」は今みたいな「知名度」はなく、友達のまわりでバレエをやっている大人などは皆無…。

舞台については、自分自身、おおいに楽しみつつも、どこか「なんちゃって」な気持ちでした。

大人で始めたのに発表会にも出してもらって、しかも、私だけ「別枠」じゃなくて、幕物にも出していただけて、ちゃんと中学生と同じ振りをいただけて…。

何て言うか幸せすぎて、「マジメに正面から受け止めきれない」っていうか…。あまりにうれしい「現実」に、心の方がついていってなかったかもしれません。

舞台を見てくれた友達の感想は、「やっぱり大人だと思った」というもの。「たしかに脚なんかはちゃんと出来てない。でも上半身や腕は子どもとは違う『大人の動き』で、雰囲気があった」ということ。

そうか…大人のバレエには、大人の「強み」もあるんだ!というのが、その時私が思ったこと。

これが私なりの「自分のバレエ」の出発点になったかもしれません。「年齢を重ねているからこそ出来る」「自分のバレエ」…あるいは、他ならぬ「私ならではの」「自分のバレエ」…。

私がバレエの上で表現できる「個性」は、本当に「ささやかな」ものだけど、でも私は「私の」バレエを踊っていきたい…と漠然とその時思ったように思います。

そして、舞台で踊るっていうのは、本当に楽しかった。お化粧して非日常の世界に入るのもとても楽しかった。つけまつ毛をつけて変身しちゃうのも楽しかった。「みんなと一緒!」を感じながら踊るのはとても楽しかった。客席から見るのではなく、舞台の上でバレエを踊っているということが楽しかった。

「舞台」という「麻薬」に身体と脳の髄まで冒されてしまいました。私は今でも「舞台」が好きだけど、この初舞台が「楽しかった!」っていうのが、私の「舞台好き」、「舞台やめられない病」の出発点ですね。

この時、男性ゲストダンサーが何人か来てくださってましたが、そのうちの1人(当時某バレエ団のプリンシパル)が、今私が通ってるN教室のN先生です。ポーズの決め方、「見せ方」なんかがうまいなぁ…と思いました。そして舞台の上でもみんなを盛上げてくれて、コールドの私達を(本番なのに)、冗談で笑わせてくれたり(まぁ、ドンキだから、そういう場面なんだけど)…。ひゃぁ、バレエの舞台の上って、本番でもこんなことが起こっているのかぁ…って、そういうのも新鮮な驚きでした。

その時は後に自分がN先生の教室に行くことになるとは考えてもみなかったけれど、諸事情で教室を変ることになった時、色々な条件を勘案してN教室をメインの教室に選んだのは、この時の舞台でご一緒させていただいた時の強烈な印象ってのもあったと思います。