夢のような日々(7)-「うれしい驚き」その1:発表会へのお誘い

イギリスから帰国してすぐのことだったと思います。T先生から「8月に発表会があるんですけれど、うちは全員参加が原則だからあなたも出てね」と言われました。

え~!!!! うそ!!!!

私、私みたいな大人は「別枠」で、発表会に出してもらえるなんて、考えてもみませんでした。青天の霹靂。でも、うれしい! うれしいビックリ。私も”one of them”の勘定に入れていただいてたのね~。

という訳でほどなく発表会の練習が始まりました。中学生以上の幕物はドンキ。私はコールドで、中学生低学年の子たちと一緒にコールド。ただし、私だけはバレエシューズでの参加です。

今思うと練習が始まった時って、バレエを始めて半年ぐらいだった訳で、よくついてったよなぁ…と思います。発表会の練習は楽しくて楽しくて、もう、なんだか夢の中をたゆたってるみたいな感じでした。多分、「客観的に自分のバレエを見る」というような目がまだなかったから(今もそうだけど)、自分がどの程度踊れてるか…なんて、あんまり考えずにやってたんだと思います。一緒に同じ踊りを踊る子たちは、みんな小さい頃からバレエを習ってる子たちばかりだから、私が「ずば抜けて」下手なのは、当たり前すぎる事実で、卑下する方がむしろ傲慢っていう状況でしたし…。

一緒に踊る中学生の子たちも、おばさんが一人入ってることをいやがるでもなく、良く教えてくれたり助けてくれたりして、そういう点でも孤独を感じたりすることもなく、「一員」に混ぜてもらってるうれしさがありました。よく出来た子どもたちだったなぁ。これは後になって引越しで教室を変ってから気づくのですが、当時、この中学生の子どもたちは、「私をかばって」踊ってくれていたんですよね。だから、そういう中学生のおかげで、私はいつも暖かさに包まれて踊っていました。自分自身でその暖かさが子どもたちから発せられているということを、当時の私には気づくだけの力がなかったんですが。

結局のところ、私は、そのクラスでは「一番年上の末っ子」っていうポジションで、みんなから甘やかされて大事にしてもらってたんだなあって思います。

幕物の他に、T先生が振りつけて下さった小品も踊ることになっていて、これは一人で踊るものでした。これも、とにかく舞台自体が初めての経験だったし(バレエの発表会というものも見たことがなかった)、私以外の人は、グランパとか、Vaとか、パ・ド・カトルとか、そういうレベルだったから、私と一緒に踊るレベルの人はいなかったし「そういうもんか」と何の疑問も持たなかったし、「一人で踊るなんて恥ずかしい!」みたいなことは、全然思わず、なんか平常心でした。

「知らない」ってすごいことですよね~。今振り返れば、「ウソだろ?」と思ったりしちゃうけど…・。何の気負いもてらいもなく、当時の私は、ただただ素直にすべてを「そういうもんか」と受け入れてました。

特に、ドンキの練習は楽しくて、「本物」のバレエに触れられる感動で胸がいっぱいでした。みんで踊るって楽しい!「ほんとの」(?)踊りを踊るって楽しい!「ほんとの」バレエ音楽で自分が踊っちゃうなんて! 

何もないところから、少しずつ作品が形になって行くのって楽しい! 最初はゼロ。そして、少しずつ区切って振りがうつされ、まずはそれぞれが自分の踊りを覚えて、全体を整え、他の踊りの人達との絡みも出てきて、ソリストやプリマ達の上手な踊りにうっとりして…。

日本バレエ協会からお借りした衣裳が来て、これをプロの方も着たのかなぁ(アマチュア用だったのかしら)…なんて思うと、それもすごく感慨深く、衣裳についた汗の しみすら、誇らしくいとおしい気持ちでした。衣裳に色々と飾りをつけたり、髪飾りを作ったり…そういうのも、みんなみんな楽しかった。

とにかくすべてのことが物珍しく、あっという間に日々が流れて行きました。