夢のような日々(5)-ロンドンでレッスン&かけもち

そんな風に楽しく週2回レッスンを重ねていましたが、翌年の4月から就職することになりました。これは、私が希望していた通りの職種ではなく(関係が全くない訳ではなくて、キャリア・アップのワンステップにはなりそうな仕事でしたが)、その後も転職のための勉強を続けながら勤めなければならない…ということで、思い切って仕事のための勉強に、就職前の1ヶ月、イギリスに行くことにしました。それまでは、「時間よりはお金がない」生活でしたが、これからは「お金よりも時間がない生活」になるので…。

イギリスへは、日本で通っていた英会話学校のロンドン本校みたいな学校に「留学」(?)という形で行くことにして、ベッドシット(普通の家の各部屋に簡単な台所をつけて貸す)も英会話学校から予約してもらいました。専攻は違うけどやはりイギリス絡みの勉強をしていた夫も一緒に行きました。

私に「バレエは大人からでも始められる」と教えてくれた英会話学校のクラスメートに「ロンドンに行くんですけれど、大人でもレッスン出来るところってあります?」と聞くと、「あるある!」と、パイナップル・ダンスセンターの地図を書いてくれました。

T教室のT先生に、「ロンドンに行くので1ヶ月レッスンを休みます。でも、あちらでもレッスンしてきます!」と言ったら、「そうなの? でも、色々違ったやり方でやるとヘンなクセがつくことがあるのよねぇ…」と、あんまり海外でのレッスンを勧めない様子。

しかし、当時の私には「かけもち」問題の存在なんてことは、全く分かってなかったので、「でも、せっかく始めたのに、1ヶ月もレッスンがあいちゃうのイヤなんですぅ」と明るく言い切ってしまい、先生の言葉の含意など、考える余裕もなく、ロンドンでのレッスンに(あ、違った、ロンドンでの勉強に?)胸をはずませて出発しました。

ロンドンでは、朝から夕方まで図書館で勉強、夕方から週3回英会話のレッスン(3時間)へ…という生活。で、土曜日の午後パイナップルでバレエ、日曜日は観光…という生活でした。

日本でのレッスンでは大人の初心者は1人という状態でしたが、パイナップルには沢山の大人の初心者がいました、というよりクラス全員が大人の初心者でした。この時にレッスンをご一緒したおばさまの1人とは(当時もすでにかなりおばさまだった)、今でもロンドンにレッスンに行くとあちこちのクラスで一緒になります。

「イギリスって大人のバレエがさかんなんだなぁ」っていうのがその時の感想です。その時点では、イギリスの方が「大人バレエ先進国」だったんだと思います。

フォイルズという「世界で一番大きな本屋さん」でバレエの本も色々探しました。この本屋では各フロアにそのフロアで扱ってる分野の専門の勉強をした店員さんがいます。バイトもある程度その分野の知識がある人が配置されてます。バレエの本のコーナーには、自分も小さい頃からバレエをやってるという若い女性がいました。多分どこかのバレエ学校の生徒さんだと思います。

「バレエを始めたばかりなんですけれど、大人の初心者のための本はありますか?」と聞くと、「特に『大人のための』っていうのはないけど…」と本選びを手伝ってくれました。そして、「実はね、私の母も40歳でバレエを始めたのよ。すっごく楽しんでるのよ」と教えてくれました。

「そうかぁ、40歳で始める人もいるのね…」と、なんだか感慨深く思いました。29歳で始めるなんて、とんでもなく遅いスタートだと思ってたんだけど、もっともっと遅く始める人もイギリスではいっぱいいるのね~と思ったのでした。

「かけもち」問題については、その後、だんだんと、バレエ界におけるその「重要性」「複雑さ」「深刻さ」というのが分かってきましたが、これについては、またいずれ。