アダージオへの道 (3)―子どもでも厳しいアダージオのチャンス

大人、しかも「大人から組」がアダージオをやらせていただく・・・なんていうのは、皆無じゃないけど、超ラッキーなことです。

実は、アダージオを踊るっていうのは、子どもにとってもなかなか得るのが難しいチャンス。

T教室は、中学生くらいまで続た生徒は、3-4人で1クラスのアダージオのクラスに編成され、週1回アダージオのクラスに出していただける「システム」がありましたが、これは、何と言っても教室に男性の先生がいらした・・・というのも大きいでしょう。

R教室やN教室のアダージオクラスがどんな仕組みになってるのかっていうのは、全然分からないのですが、ただ、舞台でアダージオを踊れる子はすっごく限られています。

R教室は、国内はおろか国際コンクールに出るような子も多いんですが、そういう子でも舞台でパ・ド・ドゥはほとんど踊りません。プロになって行く子もそれなりにいますが、そういう子でも舞台でパ・ド・ドゥを踊ったことがない方が普通です。

R教室のコンクール入賞組よりも、T教室の「普通の中学生・高校生」の方が、「舞台でパ・ド・ドゥあるいはグラン・パ・ド・ドゥ」を踊るチャンスに恵まれています。アダージオ・クラスに進級した子で、少し経験を積んだ子は、毎年、パ・ド・ドゥの作品を踊れますので・・・。そして何年かすれば、グランも踊れます。

「大人のバレエ」も色々だけど、「子どものバレエ」も色々です。

N教室においても、バリバリに踊れるK先生でさえ、グランを舞台で踊ったのは助教になって何年か経ち20代半ばになってからです。生徒さんの中に上手な人はいっぱいいるけど、パ・ド・ドゥを舞台で踊れる人はほんの一握り。幕物の主役・準主役以外には、一組か二組、パ・ド・ドゥの作品がプログラムにあるという程度。

そういう「子どもから組」でさえ、アダージオを踊れるなんて稀有・・・っていう、「(バレエの)世間の実情」(>これも狭い世間ではあるのかもしれないけれど)があることも分かって来て、T教室での私の「幸運」の価値があらためて理解できるようになり、T先生が私にそんな稀有なチャンスを与えてくださったことについてもあらためて感謝の念を深くするようになりました。
 
たまーに心の中に湧き上がってくる「もう一度アダージオやってみたいなぁ」という願望は、このように、「子どもから組でもアダージオはそう簡単には踊れない」という状況を知るほどに、「身のほど知らず!」のことなんだろうなぁ・・・と思います。