剣道と私 (10)―タフ

「運動は苦手」と思って子ども時代を過ごして来たのだが、女の子が外遊びなどをしなくなり、運動部でもない限り運動量が減る頃から運動を始めたせいで、少しずつ、みんなとの運動能力のギャップを埋め、部分的には追い越すようにもなって行った。

私は朝が苦手で、また、踏み切りを超えるバス通学をしていたため、遅刻しそうになって(>遅刻も多かった)よく走ったというのもあるかもしれないが、自分は特に持久力に優れているらしい・・・というのにも気づいた。高校の体育の持久走のタイムはなかなか良くて、クラスマッチや運動会の駅伝には毎年のように選手になった。

剣道部でも、みんなに混ざって練習するようになると、すぐにまわりから言われたのは「お前タフだなぁ」ということ。なぜか、あんまりバテないのよね。

いやぁ、知らなんだ。私って、けっこう体力あるのかな?

進学校だからか男の子にもひ弱な子がいて、ジョギングなんかすると私より遅い子がいたりして、その子にはいつも嫌がられてた。追い出しコンパの時だったか、「ジョギングの時、お前が後ろから迫って来て、たまに追い抜かれたりするの、すごーく嫌だった」と言われた。しゃーないぢゃん、あんたが遅いんだし!

当時は、まだまだ男尊女卑みたいな部分があったから、合宿なんかの時も、バテバテの男子の中で私が元気いっぱいに練習してたりすると、「ほんっとお前ってタフなぁ」と、嫌そ~に言われた。男の子なら、「お前すごいなぁ!!!」と手放しで誉めてもらえるんだろうけれど、彼らの、「タフなぁ」の中には、そういう手放しの誉め言葉とはとても思えないようなニュアンスがあった。

まぁ、私が元気だったのは、あるいは、同じ地稽古にしても男子の方が動いていて、私の動きが少なかっただけなのかもしれないが。

女子部員は夏までは4人いたけど、合宿後は2人になってしまったし、もう一人は体力がけっこうなくて、すぐバテバテになって練習をリタイアする子だったので(>日舞はうまいのに)、余計、私のタフぶりが目立ったというのもある。

私の行ってた高校は当時、女子と男子の割合が、1対2くらいで、理屈から行けば、モテても良いのだが、そんな訳で、私は、「女の子のカテゴリーの外枠」扱いを受けるハメになってしまったのであった。

自分のこと「弱い」って思ってたけど、そうでもないのかなぁ・・・って、ちょっと自信が持てて来た頃でもある。

ただ、「運動をする」という場での体力と、仕事や勉強を長期に続けるという場での体力は別物の部分もある。なので、そういう仕事や勉強の長期的体力については、私はまだまだ根本のところでは自信を持てなかったし、実は、今も持っていない。もし、この点で自信が持てたり、実際に自信を持てるだけのものが自分にあれば、私はもっと違う進路を選んでいたかもなーと思う。