韓流にはまる (1)-流行りもの&『冬のソナタから考える』

巷では韓流ドラマが流行っているという。元同僚(>♂)で、韓流にはまりまくっている(>♂は珍しい?)人がいて、彼と食事した時に、さんざん韓流の魅力について聞かされ、「我々はサーヴィス業なんだから、流行りものには一応目を通しておかないと…」と助言された。

「ふーん」と思ったが、なんとなくそのまま日は過ぎていったが、マスコミでは中年女性のヨン様ブームが取り上げられ、なんだかすごいことにはなってるなーとぼーっとブームを眺めていた。夫が時々「冬のソナタ」を見ていたけど、私は途中からだったので脈絡が掴めずなんとなく、ちょっとそばで見ては台所に立つ、という感じで、ほとんど訳が分かっていなかった。

が、ある日、本屋で『冬のソナタから考える-私たちと韓国の間』という岩波ブックレットを見つけた。ほぉ、天下の岩波書店(>我々の業界では権威ある出版社)が、冬ソナですか…とふと手に取ってみた。パラパラとページをめくってみると、なかなか面白そうだ。岩波ブックレットだから薄いし…と購入した。岩波ホール支配人だった高野悦子さんへのインタビューも収録されている。

読んでみると、なかなか興味深い内容だ。まずは、なんだって、このドラマがこんなに中年女性に受けているのか?ということを、NHKに寄せられた視聴者からの手紙で探っていく。このブックレットによって実は、多くの日本人がこのドラマで癒されたということを知った。一番印象的だったのは、嫁として妻として、自分を押し殺して夫の親を介護してきた高齢の女性の話。彼女は色々なことをガマンして生きているうちに、いつも自分の感情を押さえ込むようになってしまっていたそうだ。だが、このドラマを見ている時に「涙を流している」自分に気付き、「あぁ、私にもまだ感情が残っていたんだ」と、蘇生した思いがしたそうだ。

また、このブックレットでは、『冬のソナタ』の日本語の吹き替えが流行の理由の一つだと分析している。つまり、ここで使われている日本語がとても正しく丁寧で美しく、現代の私たちが、忘れてしまっている日本語本来の美しさを教えてくれるというのだ。視聴者からも、「日本語がこんなに美しい言葉だったということを改めて認識した」というような手紙が寄せられているそうだ。ドラマの主人公たちは、お礼や謝罪をきちんと言う。当たり前のことなのだけど、そういう当たり前のことを忘れて突っ走っている現代の日本人が、このドラマで改めて「失ってきたもの」を見直しているのかもしれない。

日本人女性が韓国の男性に夢中になるのを白い眼で見ている男性も多いけれど、実は、昔、日本人男性が韓国女性に夢中になっていた時代がある、と高野さんは言う。そんな女性の一人が、韓国の舞姫、崔承喜という人で、高野さんはそのダンサーの映画を作ったそうだ。高野さんが映画を作っていた当時はまだ今ほど韓国と日本の文化交流は盛んでなかったので、高野さんは韓国の人から「なんで日本人が韓国人の映画を作るんだ!」と疑惑の目で見られたそう。高野さんは小さい頃にこのダンサーの踊りを見たことがあり、それが忘れられなかったのと、自身石井漠さんのところで踊りを習ったことがあり、崔承喜さんも石井漠の門下であったことから、同門ということもあるのだ、ということをお話ししたそうです。でもってその時に「あなたは韓国舞踊に詳しいのか?」と聞かれ「70歳の手習いで始めようと思っている」と答えたそうなんですが、それが韓国の新聞に載ってしまい、引っ込みがつかなくなり、実際に韓国舞踊を習い始めたそう。

そして、その70歳の手習いの韓国舞踊を、韓国でのこの映画の上映会の時に披露することが出来たとか。高野さんは一時身体を壊されており、この韓国舞踊が、健康回復の上でもとても役だったのだとか。まぁ、もちろん幼い頃、踊りを習ってらしたというのも大きいのだろうけれど、写真に写っている高野さんの韓国舞踊を踊る姿はなかなかにサマになっている。

高野さんのまわりの韓国の友人たちは、『冬ソナ』ブームにとまどいながらも、これが日韓交流にとって良い影響を与えると歓迎しているそう。

・…と、なかなかに興味深いドラマかも…と思って、とりあえず『冬のソナタ』を私も見てみることにしたのでありました。