私がバレエを始めたT教室には、子どもの頃バレエを習っていて大人になって再開した、という人が何人かいました。ブランクがあっても、また練習を重ねていけば、前と同じかそれ以上になる可能性がある…。
子どもの場合、親から言われて嫌々レッスンに通っていたり、自分が本当にバレエが好きなのかよく分からずただ何となく通っていたり…そういうこともあると思います。でも、大人になって「自分の意志で」再開する場合は違う。自分が何故もう一度バレエを踊りたいのか、その際どんな風に踊りたいのか、ということが分かって再入門してくる。
もちろんレッスンを重ねる中で最初の志は変化していくでしょうけれど。
先生にとっては、同じ教室に昔習っていた子が大人になって戻ってくれば、すごくうれしい。T教室にいた再開組の人はみな子どもの頃T教室で習っていた人でした。「大人のバレエ」が今のようにさかんになる前は、こんな風に昔習っていた教室に帰ってくる…というような再開組が多かったのかもしれない…。
で、自分の意志でバレエを再開した「やる気」のある大人は、子どもの頃に身につけた、「大人から」組には決して手に入れることの出来ない身体に染み込んだ「感覚」や「記憶」を持っているし、大人になって色々と自分で工夫することも知っているから、子どもの頃とは違った「踊り」が出来るようになっている。ブランクのある大人でも、案外体力もある。
先生はそういう彼女達のことを見て、「大人でもやる気があればかなりのところまで行ける」というのを、認識されたんじゃないかと思います。場合によっては「やる気」のある大人の方が、「なんとなく」の子どもより、ずっと「良い」生徒だったりする。大人の生徒も悪くないかも…と思われたというのはあると思う。
そのことが、「大人から」組が門を叩いた時に、先生をして「あの子達だってブランクがあっても思っていたよりずっと上達した。やる気があれば初めてでも大丈夫かも…」と思わせたのではないかなぁと思うのです。
もちろん、「大人から」組が頑張っているのを見て、再開組が門を叩いた時に「初めての大人だってあんなに頑張るんだから、経験があれば全然大丈夫」というように逆のケースもあったかもしれません。「大人のバレエ」がさかんになってからは、この両者の相乗効果というのがどんどん大きくなっていったと思います。
再開組の人にとっては、「大人から」組が楽しくバレエを踊っている姿を見て、「もう1回やろうかな」「初めての人だってあれだけやってるんだから、経験がある私ならもっともっと出来るようになるよね」と、再開のための障壁がぐっと低くなったと思います。
「大人から」でもバレエが始められるようになった…その陰には、色々な人がいました。その人たちの努力が、バレエの先生達に「大人から」でも「大丈夫かな?」と思わせた。そして実際に「大人から」始めた人が、「大丈夫!!!」と確信させた。
「大人から」組が頑張る姿は、今度は逆に年齢の高い子ども達がバレエを始めることを励まし、再開組が「えいや!」とまた踊る気持ちになるのを励ましてきた。継続組に「バレエにこんな楽しみ方もあるのねぇ」「そうよね。バレエの原点は楽しく踊るってことよねぇ」って思わせた。
「大人のバレエ」はそれぞれにバレエが大好きな、色々なタイプの「大人」達が相互に刺激しあって発展してきたんだなぁ…としみじみ思います。