「大人からのバレエ」前史 (1)-「遅れてきた」子どもたち 

私は「大人のバレエ」開拓者である、という自負を持っていますが、でも、実は、「大人からのバレエ」が可能になるには、その前史があったと思っています。そして、「大人から」バレエを始めた人たちは、その前史を切り拓いてくれた人たちへの感謝の心を忘れてはいけないのだと思っています。

たとえば、遅くバレエを始めた子どもたち。『トゥシューズ』のくるみちゃんもそうだけど、「オール・オア・ナッシング」的な発想の強い日本において、「習い事は小さい頃に始めないとダメ」という思想は結構はびこっていた(いる?)と思います。そんな中で、みんなよりは「少し」遅れてバレエを始めた子どもたち。

くるみちゃんも、自分が遅れてバレエを始めたということで、焦ったり悩んだり苦しんだりします。実際に遅く始めた子たちもそうだったと思うんですよね。でも、その子たちが、「ちょっとくらい遅く始めても、やる気があれば大丈夫」というのを、先生やレッスンメイトに示してくれた。そういうのはあると思う。

私の従妹も実は中学でバレエを始めました。彼女の場合は中学校のクラブ活動で体操部に入ったことがキッカケだったんですが。子ども(といってももう高校生だったけど)のクセに「小さい頃に始めないと」思想に染まっていた私は、とてもびっくりして、「え~! バレエって小さい頃じゃないと始められないんじゃないのぉ!」と言いました。従妹は、「中学生からだって大丈夫よ。身体も私すっごく固かったけど、こんなに柔らかくなったもん」って脚抜きして見せてくれました。

ひゃ~! そうだったのか! 彼女は大人になってからまた踊りを再開し、今はコンテンポラリーの方でかなり踊っています。プロの公演なんかで踊ったりすることもあるみたい。

小学校高学年から、あるいは中学生から始めた子たちが、苦労しながらも頑張ってる姿が、「大人からのバレエ」のための道ならしをしてくれたことは間違いないでしょう。