剣道と私 (12)―オリエンテーションでの勧誘

まぁ、15歳で始めたっていうのは、それなりの意味はあった。

でも、私の剣道が本当に伸びたのは大学に入ってからだ。大学では週4回以上は練習してたし、やはり、プロの指導者のいるところでやってたからだ。

しかも、非常に質の良い指導者が教えに来てくれていた。NHKの剣道の試合の解説をつとめるような人もいたし、他の大学で教えてらっしゃる先生で全日本で何度も優勝している人がたまたま「国内留学」という形でうちの大学に籍を置いていて、1年間みっちり指導していただいたりもした。

だから、私の剣道が「伸びた」と言っても、それって、指導者に恵まれただけかもしれない。しかし、なので、指導者に恵まれるということは、ほんとうに大事だっていうのも身に沁みて分かった、というのもある。

大学時代のことを振り返ると、胸が苦しくなるような思いがする。もっとチャラチャラした青春を送りたかったなーと思ったりすることもある。いろいろな意味で苦しい4年間だった。その4年間の生活の中で剣道部の部活が占めていた割合はとても大きい。

大学に入っても剣道を続けたい!という気持ちは持っていた。しかし、私の剣道は、強豪私立ではついていけないだろうなぁという思いもあったので、私の第一志望は、「○○大学△△学部」に行きたいというより、「○○大学剣道部」に入りたいというのもあったかもしれない。第二志望は、スポーツ推薦なんかで入ってくる子もいたりするので、きっと無理かなぁ・・・と思っていたのだ。

だけど、一方で、第一志望の大学にあるというフィギュア・スケートのサークルにも興味があって、あの時フィギュアの方を選んでいれば、私のバレエももうちょっと違ってたかもなーという思いもあったりする。

どこの大学もそうだと思うけれど、新入生歓迎の催しでは、部活の勧誘の人がオリエンテーションに来る新入生をひっつかまえて、(しつこく)勧誘する。

私はまず、女子バスケの人に掴まって勧誘されたのだが、「もし運動部に入るなら剣道部に」と言ったら、その女子バスケの人が、「剣道部~!!!」と大声を上げて、剣道部の人を呼び、私は剣道部の先輩に拉致されて剣道部の机のところに連れていかれた。

体育会は人材確保が大変なので、お互い協力体制を敷いているのだ。

で、一応名簿に名前を書いた。2段だと言うと、「おぉ、是非入って!」と言われ、「じゃあ、悪い虫がつくといけないから、君はこっちから行きなさい」と他の部の勧誘を受けないように誘導されて、オリエンテーションの会場に連れて行かれてしまった。

なので、他にどんなサークルや部活があるのかなーというようなのを、知らないままに私は結局剣道部に入ることにしてしまった。あの時、あのながーい列の中をちゃーんと歩いて通っていたら、どうなってたのかなぁ・・と思ってみたりもするのだけれど。