夫が長期海外研修中なので、夏休み、Qを連れてイギリスに行くことになりました。Qは2歳半~4歳半まで単身子連れ留学した私と一緒にイギリスに住んでいたのですが、この時の暮らしはQにとっては、かなり辛いものだったみたいです。よく「子どもは適応能力が高いから外国に行ってもすぐ慣れる」といいますが、実は、新しい環境に慣れるというのは、子どもにとっても大きな負担になるみたいです。もちろん、子どもにもよるのでしょうが。
なので、これまでは、私がイギリスに行く時に「一緒に行こうよ」と誘っても、「うん」とは言ってくれなかったんですよね。
でも、今回は、「しばらくぶりに父親に会える」ということもあったし、中学生になって英語を習い始めたということもあって、ついに一緒にイギリスに行くことになりました。かつては、イギリスの保育園で英語で何とかやってたQではありますが、「完璧主義者」のきらいのあるQは、「自分の英語はパーフェクトではない」という思いをずっと胸にいだいていたらしく、彼にとって、英語はけっこうトラウマになっていたみたいです。
少しでも英語をやっておけば、イギリスに行った時に楽かなぁというのもあって、「英会話やってみる?」と聞くと、「うん」というので、私の行っている学校で何度か個人レッスンを取らせました。「学校の英語より楽しい」と言って喜んで通っていたので、帰国後も、少し通わせ続けてみようかなと思ってます。なにせ英会話って「お高い」ので「家計の許す範囲」でしか通わせられませんが、たとえ「細々」でも、大学入学ぐらいまで続ければ、「それなり」の結果は出るでしょう。
という訳で、超ドロ縄で英会話レッスンに通ったQと、出発当日までドタバタ仕事を片付けていた(>そして片付かなかった)私と、そして、ついでに私の母と、3人でイギリスに向かいました。
ロンドンからの乗り継ぎ便が遅れに遅れ、キャンセルになる飛行機も相次ぐなか、私はと言えば「夫が空港に迎えに来てくれるしぃ」と安心しきっていて、最初の日に泊まるホテルの名前を書いたメモを家に忘れてきてしまっていて、もし、ここで夫に会えなかったらどうなるんだ!!!!状態でしたが、私達の乗る便の前の便や後の便がキャンセルになる中、奇跡的に飛んだ飛行機に乗って、予定より2時間以上遅れて夫との再会を果たすことが出来ました。
その後、最初の数日はみんなでスコットランドを旅しました。
まずは、セントアンドリューズ大学。ここでは、学生が案内役となって、セントアンドリューズ大学と、そして大学と「宗教」によって深く結びついていたセントアンドリューズ城、セントアンドリューズ大聖堂を案内してくれる「ツアー」に参加してみました。
セントアンドリューズ大学はスコットランドのオックス・ブリッジみたいな感じの大学です。歴史が古くて伝統もあるし、格式もある。イギリスの多くの大学がそうであるように、この大学もキリスト教の聖職者の育成と関わって出来た大学です。
世界史で「宗教改革」というのを習いましたが(>プロテスタントの人々は、カソリックの聖職者を腐敗していると批判したのでした。カソリックの聖職者(>の一部)は「天国に行きたければこのお札を買いな」などと金儲けに走ったりしていたらしい。すっごいアバウトな説明ですが)、「宗教」をめぐる争いというのは、昔も今も非常に激しいものなのですね。セントアンドリューズ大学でも、この「宗教改革」の嵐の中で、いろいろな出来事がありました。
そもそもセントアンドリューズ大学が出来た当時は、キリスト教と言えばカソリックしかなかった訳ですが、この「宗教改革」の時代には、プロテスタントの学生も入学して来て、プロテスタントの教義を説いたりしたのでした。そんな学生の一人、イニシャルがP.H.の学生(名前を聞いたが忘れてしまった)は、大学当局によって、「間違って」燃やされてしまいました。
「おいおい」って感じですが、今でも社会問題となっているインドの「ダウリ死」 (>妻の持ってきた持参金(=ダウリ)が少ないと言って、じゃあ、嫁さん焼き殺して次の妻をもらうか、と嫁を焼いてしまう)においても、「嫁が台所仕事してたら間違ってサリーに火がついちゃったんですよ~」と言って、家族は、これを「事故死」で片付けようとするらしいのですが(>そして「事故死」で片付けられてしまうことも多いみたいなのですが)、「宗教改革」時代のスコットランドにおいても、「あ、間違って人に火つけちゃったら死んじゃったぁ」と片付けていたんでしょうか。
で、その焼き殺されたイニシャルP.H.の学生の「うらみ」が今でもセントアンドリューズの町には息づいているのです。セントアンドリューズ大学に所属する聖マーガレット教会前の歩道の上の、その学生の焼かれた場所(>と言ってたと思うがリスニング能力に今ひとつ自信がない)には、「PH」と刻まれており、そして、その教会の塔の「PH」がちょうど見える位置の壁にP.H.さんの顔がほのかに浮き上がっています。で、歩道の上の「PH」を踏むと、P.H.さんはそれを塔の上から見下ろして睨む・・・。
この「PH」を踏んでしまった学生は「試験に落第する」というジンクスがあるそうで、この「のろい」をとくためには、5月1日の夜明け前に海に入るしかないのだそうです。5月のスコットランドと言えばまだ肌寒く、しかも夜明け前ともなれば、非常に寒い・・・。5月1日には、くちびるを青くしたがたがた震えている学生がいっぱい海に入っているそうです。いやはや・・・。